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Vol.13 動物園ってなに? Part V ~動物園の芯(core)~

2013.8.28

 本連載から少し脇道に反れますが、今回は、「消えていいのか?」とか「なくなってよいのか?」とか、最近、かまびすしく取り沙汰される動物園の現況に対する極私的感想を本稿も含め2回に分けて書き記したいと思います。

 『森の生活(ウォールデン)』でよく知られている北米の思想家ヘンリー・デビッド・ソローは、数々の心に沁みる名言を残してくれました(参考URL:http://www.brainyquote.com/quotes/authors/h/henry_david_thoreau.html)。
 環境教育に関するデイヴィド・ソベルの名著、『足もとの自然から始めよう』(原題:BEYOND ECOPHOBIA Reclaiming the Heart in Nature Education)でも、以下のソローの言葉の一部が引用されています。

“I am struck by the fact that the more slowly trees grow at first, the sounder they are at the core and I think the same is true of human beings. We do not wish to see children precocious, making great strides in their early years like sprouts, producing soft and perishable timber, but better if they expand slowly at first, as if contending with difficulties, and so are solidified and perfected. Such trees continue to expand with nearly equal rapidity to extreme old age.”

 意訳すれば、「最初に、ゆっくり育てれば、木の芯(core)はしっかりする。人間も同様である。促成栽培した木が軟らかくて腐り易い木材になるように、子どもが早熟してゆく姿は見たくはない。困難を避けながら、ゆっくりと大きくなってゆくほど、強固で立派に育つと思う。そのような木々は、年を経ても若木の頃と同様に生長し続けるものだ。」となります。これを日本の動物園に当てはめてみると、ソローの言うところの「芯」が、現在の動物園には形成されていないように思えてきます。それは、歴史的にゆっくりと着実に動物園が発展して来なかったためかもしれません。

 

 

 幕末や明治維新後に、海外列強国の動向を探るため、もしくは工業や政治や経済を学ぶために、幕府の遣欧使節として、時には藩命による密航者として、または万国博覧会の責任者として、有能な若者たちが外国へ送り込まれました。彼の地で見聞を深めてきた若者たちが、後に博物館や美術館等の様々な文化施設(都市装置)の建設にも貢献したのです。その経緯については、たとえば『博物館の誕生-町田久成と東京帝室博物館-』(関 秀夫著、岩波新書、2005年)などの関連図書もしくは資料から知ることができます。それらを読むと、社会教育施設が欧米列強に比肩できる国づくりのために青少年教育を目的として設置されたことが分かります。1882年3月2日に博物館附属施設として開園した上野動物園もそのひとつです。

 しかし、当時の関係者たちによる海外文化導入の努力にも関わらず、ヨーロッパの社会教育施設が成立基盤としている歴史的な「文化」までは導入できなかったようです。あまりにも短い時間の中で国家を立ち上げる(促成栽培する)必要があり、文化基盤構築よりも富国強兵や殖産興業が重要視され優先されたからでしょう。すなわち、導入された文化施設が表面上同等ではあっても決して同質ではなかったのです。

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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