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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.1 ひとのいない動物園

2012.5.29

動物園長としては、当たり前のことですが、動物園が大勢の来園者で賑わっているのをとても嬉しく思います。開園前の入り口に、来園者が列をなしている光景などを見ると、つい頬の筋肉がゆるんできます。

「いいぞ、その調子!」
などと、心の中で叫んだりもします。

開園前の人気のない動物園内を歩くのは、私の至福の時でもあります。

でも、あまり大声では言えないのですが、まったく人気のない静かな動物園も実は好きだったりするのです。たとえば、開園前や閉園後の園内を歩くのは、私にとって至福の時です。

なぜ、人のいない動物園が好きかというと、動物たちの姿がいつもと違って見えること、そしてそんな動物たちと一対一で会話ができることです。といっても、一方通行の会話ですが。

しかしながら、こんな楽しい時間を独り占めするのは、やはり園長としてはいただけない行為です。いつか、動物園内のロッジに一泊した来園者と一緒に、動物舎の前にテーブルを置いてモーニングティーを飲みながら、動物談義などをしたいと企んでいます。

朝、私を見かけた動物たちは、よく挨拶してくれます。「よっ、園長!頑張ってるか?」ってね。

「ほら、ゾウが挨拶に来ましたね。朝一番に見た人に対して、多くの動物たちは、あのように挨拶に来るのですよ。皆さんは挨拶していますか?最近の若者は、家庭でも挨拶を忘れているようで、どうも良くないですね。」

「園長、教育委員会の先生のようですよ!。」

「あっ、そうだね。年をとって、つい愚痴っぽくなっていまいました。アハハハ…。」

なんて会話しながらね。

著者プロフィール

村田浩一(むらた・こういち)

1952年神戸市生まれ。
1978年から2001年まで、神戸市立王子動物園で獣医師として働く。
2001年、日本大学生物資源科学部へ転職し、2011年からは、よこはま動物園ズーラシア園長を兼務。日本野生動物医学会会長(現顧問)、IUCN/Wildlife Health Specialist Group東アジア地区委員長。専門は野生動物医学、動物園学。楽しく学べる動物園を目指して、日々、動物園内で主に楽しんでいる。趣味は、自然の中で静かに佇むこと。

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