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Vol.21 人工保育に切り替えたツメナシカワウソの赤ちゃん その後

2015.7.27

2015年3月17日に生まれて約2か月後の6月6日にツメナシカワウソの赤ちゃんたちを人工保育に切り替えました。
その後とにかく1週間ぐらいは胃が痛くなる毎日を送ってスタッフが試行錯誤しながら赤ちゃんたちを育てました。その時はしんどくて「飼育係の落書き帳」には書けなかったことも書き加えつつ、振り返ってみたいと思います。

2015.6.6 人工保育開始

2015.6.6 人工保育開始

さてツメナシカワウソの人工保育ですが、コツメカワウソの人工保育は一度だけ経験したことはありましたけどツメナシカワウソは初めてでした。もしもの時の為に予備で置いていた猫用ミルク(コツメカワウソの人工保育時に使ってうまくいった実績がある)をスタッフルームの奥から引っ張り出してきましたがツメナシの子はコツメに比べると大き過ぎて量が足らず。慌てて近隣のペットショップやホームセンターで同じミルクを探しまたが販売中止なのか見つかりませんでした。
焦りに焦った末、仕方なく今までに使ったことのない猫用ミルクで代用して育てました。

2015.6.9人工保育3日目 少し元気になる

2015.6.9人工保育3日目 少し元気になる

前回にも書きましが、スタッフの家に連れて帰ったその日の夜中になんとか飲んでくれた例の実績のない猫用ミルク。
その時は2頭とも哺乳瓶から50mlずつ飲んでくれたので安心しましたけど、その後まさかあんなに苦労をするとは思ってもみなかったです。

ケージを組み立てている作業を見る赤ちゃんたち

ケージを組み立てている作業を見る赤ちゃんたち

人工保育に切り替えて1週間ぐらいはミルクを安定して飲んでくれず、魚のミンチも食べてくれなくて赤ちゃんたちは日に日に体重が減っていきました。
人工保育を開始し始めた時、そのみている動物たちの体重が減っていくことがどんなけ辛いかは飼育担当にならないと分からないかもしれません。
この子たちが頼れるのは担当スタッフだけ。その担当スタッフ自身が右も左も分からないまま母親から急に赤ちゃんをバトンタッチされ、その上体重が増えるべき時期に逆に減っていくのです。 明日こそは増えてくれ!と祈りながら次の日に体重を計るとまた減っていて、その次の日にもまた体重が減って・・・でもミルクをたくさん飲んでくれなくて・・・体重計の数字上は赤ちゃんたちの体力が日に日に衰えていくのと同じです。

人工保育3日目 ミルクを嫌がる赤ちゃん

人工保育3日目 ミルクを嫌がる赤ちゃん

でも。慣れない人工ミルクを急にたくさんあげても下痢をしてしまうことがあり、そうなると元も子もありません。
あげたいけどもあげられない・・・便の状態を見ながらできる限りミルクをあげて・・・でも自分からは飲んでくれないので半強制的に哺乳瓶を口に入れて飲ませて・・・あとは見た目上、元気が衰退していかないかよくよく観察し、体重が減っていくことに対してスタッフ自身がどこまで我慢ができるのか、そして赤ちゃんたちがどこまで我慢ができるのかを手探りで感じながら半強制的にミルクの量を増やしていきました。(ミルクにはアジの身の搾り汁も足しています)

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上の様に文章で書くとちょっと大袈裟ですが、スタッフの胃が痛くなるのは事実です(笑)
そんな時期を数日過ぎると、赤ちゃんに対してこの子はこんな感じ、こっちの子はこんな感じ、便はこれで普通・・・顔つき、雰囲気~O.K! みたいにスタッフ自身がなんとなく要領を掴んできまして、赤ちゃんたちは人工保育開始3日後には体重が減りつつも元気に動くようになり、1週間後には体重の落ちが止まって同時にアジのミンチを食べ始め、その後少しずつジワジワと体重が増え始め、そして人工保育3週間後にやっと元の体重に戻りました。人工保育のスタート地点に戻るまでに3週間もかかったことになります。

人工保育6日目 少しだけアジの身を食べ始める

人工保育6日目 少しだけアジの身を食べ始める

数字で具体的に言いますと、人工保育を始める3日前の体重が2800g、それが人工保育に変えてからジワジワと体重が減り、1週間後には2100gまで落ちました。そして人工保育2週間目に2600gにまで増加し、3週間目にやっと2900gに増えて元に戻りました。
赤ちゃんが成長するべき時期に体重が1/4も落ちたらハラハラドキドキしませんか? スタッフは死ぬほどドキドキしましたよ。

スタッフルームで遊ぶ赤ちゃんたち

スタッフルームで遊ぶ赤ちゃんたち

それと同時にスタッフも体重が落ちそうな気がしますが、こういう時こそ逆に「負けたらアカン!」と思ってガッつり食べるので3kgも太りました。
苦労しましたけど、結果的に今のところ順調なので良い経験になりました。
このまま何もなく「順調」が続けばしんどかったことも笑い話になります。

人工保育15日目 体重が増え始める

人工保育15日目 体重が増え始める

もう少し頑張って完全なる笑い話にしたいものです。

著者プロフィール

田村龍太 (たむら・りゅうた)

1976年生まれ。大阪府出身。
1996年二見シーパラダイス(現 伊勢夫婦岩ふれあい水族館シーパラダイス)入社。
現在飼育全般の管理と若いスタッフへのくだまき係をしている。「自分を生かしてくれている世間様のために還元!」と自らを正当化して時々突発的な大きな買い物をする。

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