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Vol.76 それぞれの個性と成長

2022.12.17

三つ子の魂百までと言うことわざがあります。小さい頃の性格は大人になっても変わらないと言う意味ですが、人間だけではなく、伊勢シーパラダイスで暮らしている動物たちにも結構あてはまることでして、成長するにつれて多少の変化はありますが根本的な部分が劇的に変化することはあまり無いです。

2017年生まれのツメナシカワウソ・甘えん坊キラリくん

そもそも論として、海獣たちにも性格の違いがあるのか?と言う点では、少なくとも伊勢シーパライスで暮らしている海獣たちには1頭1頭の性格の違いがあります。
臆病な性格の子・強気な子・我関せずで周りを気にしない子・気にする子・警戒心が強い子・薄い子・ボーっとしている傾向が強い子・弱い子等、それぞれいろいろな傾向の組み合わせとその強弱が複雑に組み合わさって個々の個性が出来ています。

2017年生まれのケープペンギン・我が道を行くハニーちゃん

そんな個性豊かな海獣たちと接する飼育係は、もちろんその子たちの性格に合わせて(トレーニングも含めて)接する訳ですが、だからと言ってその子に合わせすぎると「飼育管理」をすると言う意味で不都合が出てきたりすることもあり、そのバランスがなかなか難しいところです。

2019年生まれのカリフォルニアアシカ・甘えん坊の日向くん

そんな中、カリフォルニアアシカの母子を何頭か見ていてある傾向に気付きました。
その傾向とは、神経質ですぐに怒る厳しいお母さんに育てられた赤ちゃんは繊細で臆病な傾向が強く、放任主義のお母さんに育てられた赤ちゃんは冒険心や好奇心が強く、少し抜けた感じの性格になる傾向が強い気がします。
ですので、その赤ちゃんが母親に育てられる期間が長い場合は、母親の性格がその赤ちゃんの性格にも何かしらの影響を与えるとは思います。

2020年生まれのゴマフアザラシ・警戒心が薄いルン太くん

とは言え、人間と海獣たちの子育てでの大きな違いは、赤ちゃんが成長して独立するまでの期間が一部を除き全体的に短いと言うことです。アザラシの仲間は約2週間で親から離れ、アシカの仲間たちも約1年間で自立します。母親から影響を受ける期間が人間よりも短いとは言え、短い中でも影響を受けている様に見えます。
赤っちゃんたちにとって、繊細で臆病な子の方が良いのか?好奇心旺盛で冒険心が強い方が良いのか? どちらにせよ、どこかで失敗しそれを克服し・・・の繰り返しを体験学習して成長して行くのでしょうね。

2020年生まれのトド・私がルールな桃子ちゃん

野生下では警戒心が強い方が生きて行く為に安定していて良いかもしれず、でも冒険心や遊び心がある方が新しい発見をして自分の生活に活用出来るかもしれず。どちらが良いか?と言うお話ではなく、大袈裟に言うと人間も含めていろいろな性格の子がいるから多様性が出来て種として発展してこれたのかな?と考えたりするぐらい動物たちにも個性があります。

2021年生まれのカリフォルニアアシカ・我関せずな海音ちゃん

臆病で一歩踏み出さなかったことでの失敗。冒険心で一歩踏み出してみての失敗。の違いがありますが、それぞれが個々の性格のまま何となく中道に近づくことが生きて行く為の成長なのでしょうか?
皆さんも、いろいろな動物園や水族館で各動物たちの性格の違いを見て頂ければ更に興味深く観察して頂けるのではないかと思います。パッと見てもなかなか分からないとも思いますので、そう言う時は是非飼育スタッフたちに聞いてみて下さい!

2022年生まれのカリフォルニアアシカのお転婆赤ちゃん

著者プロフィール

田村龍太 (たむら・りゅうた)

1976年生まれ。大阪府出身。
1996年二見シーパラダイス(現 伊勢夫婦岩ふれあい水族館シーパラダイス)入社。
現在飼育全般の管理と若いスタッフへのくだまき係をしている。「自分を生かしてくれている世間様のために還元!」と自らを正当化して時々突発的な大きな買い物をする。

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