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Vol.7 タラの同居訓練

2016.4.19

みなさんこんにちは!
すっかりあたたかくなって、なんだか眠たくなってしまいますね。
最近はハヌマンラングールのこどもたちも、午前中はすこしエサを食べると早めのお昼寝タイムに入っています。

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写真は、妹・サトの寝起き顔。手足をぐっと体に寄せて小さくなって眠るんです。

さて、今回は人工哺育のハヌマンラングールの姉、タラの成長について。
生まれた時は500gほどだった体重も今では3kgを越えました。

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すくすく育つタラですが、今回ご紹介する成長は、コミュニケーション能力。

人工哺育で育った動物(特に霊長類は幼児期の刷り込みが強いといわれています)は、動物同士のコミュニケーションを学ぶ機会が少なく、社会性の発達に大きな不安があります。
うまく仲間をつくれずに生涯1頭でくらさなければならない状態になってしまうことも少なくありません。

ハヌマンラングールの姉妹にも、当然その心配があるため、人工哺育を行う判断をした時から「動物との接触をできるだけ多くする」ことを意識して関わってきました。
この「接触」には、物理的に触れることだけでなく、姿を見る・声を聞く・においをかぐことも含まれます。

生まれたその日から、できる限りお母さんのリンダとその姉・ソフィーの近くですごさせるようにして、お見合いをはじめました。

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写真は生後半年ごろ。今とはちがう施設でのお見合いの様子です。

はじめは顔を見ることすらしなかったタラも、徐々におとなたちを目で追うように。
はじめはタラを見るだけで大興奮だったリンダも、徐々に落ち着いてすごせるように。
お互いに歩み寄っている様子が少しずつではありますが見てとれました。

また、動物との接触を多くすることは、イコール、人との接触を減らすこと。
いつまでも人にべったりだと、そのこどもが人間離れできないのはもちろん、その様子を見ているまわりのおとなたちからも受け入れられにくくなってしまうためです。
少しさみしい気持ちもありましたが、ミルクが必要なくなってからはできるだけ姿を見せないようにしていきました。

そうしてだんだん、タラは人と距離をとることができるようになってきました。

人工哺育をしていたわたしのことは覚えているようでしたが、以前のように姿を見ただけで 鳴いてさけんで大暴れ!ということはなくなりました。

同時進行で、おとなたちとのお見合いを重ねていきます。
金網越しにリンダやソフィーと寄り添うことも少しずつ増えてきて、もう大丈夫なんじゃないかな、と思えるようになってきました。

寝室内では2つの寝室を区切る金網越し、展示場では特別に設置したネット越しに 顔を合わせ、時には毛づくろいをするような仕草も見られました。

そして、2015年11月24日、タラが1才7か月の時にはじめておとな2頭との同居訓練を行いました。
「訓練」といっても、おとなたちがいる展示場にタラを出す。それだけです。

たったそれだけのことなのですが、少し前まではタラを見るなり興奮して動きがすばやく激しくなっていたリンダを思うと、うまくいくかどうかとても心配でした。

万が一の時のために他の飼育員にも立ち会ってもらい、ゆっくり扉を開けると、おそるおそる外に顔を出すタラ。

どきどき…

それを見て大きな声で鳴くリンダ。

大丈夫かな…

リンダがタラに跳びかかるのでは!?
と、わたしのどきどきは最高潮だったのですが、タラはあっさり外に出て、おとなたちのまわりをピョンピョン走りはじめました。

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右から、ソフィー、タラ、リンダ。

拍子抜けするくらいあっさりとはじめての同居訓練は成功しました。

触れ合うことこそなかったものの、まるでずっと一緒にくらしていたかのようにごくごく自然な3頭。
とくにお母さんのリンダはタラを目で追ったり、なんだか母の顔?

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タラも実母・リンダを意識しているようで、叔母さんのソフィーよりもリンダをじっと見つめ、なんとなく近くにいることが多いようでした。

長い間離れていても、親子なんだな、何か感じるものがあるのかな。
タラはちゃんとハヌマンラングールに育ってきているところなんだな。
とてもおだやかな3頭の様子に、乳母(わたし)は涙が出そうになったのをよく覚えています。

わたしが少し慎重になり過ぎたこともあり、同居訓練に踏み切るのは遅くなってしまいましたが、今のところとても順調!

そう遠くない将来、サトも含めた4頭が一緒にくらせる日がくるよう、陰ながら支えていきたいと思います。

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次回は、2才の誕生日をむかえるタラのこれまでを振り返ります!

著者プロフィール

川出比香里(かわで・ひかり)

1991年生まれ 埼玉県出身
専門学校を卒業後、埼玉県こども動物自然公園でのアルバイトを経て、2012年にときわ動物園就職。偶蹄類が好きでサルは大の苦手だったが、担当になるとあっという間に夢中になり、今では3児(すべてサル)の母。

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