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Vol.15 奔放な姉と押され気味の妹

2016.12.13

みなさんこんにちは!
2016年もあと少しでおしまい、ということで、申年最後のコラムです。

ここまで、人工哺育で育ったハヌマンラングールの姉妹のお話をしてきました。
同じ種、同じ親から生まれた1才違いの姉妹なのに、こうもちがうか!…というのはちょっと大げさですが、2頭は顔も性格もまったくちがいます。
今日は、似ているようで全然違う、タラとサトのお話です。

まずは、顔。
顔のちがいは、この2頭に限らず多くの動物についてお客様から「どこが違うの?」「見分けがつかない」と言われてしまいますが、やっぱりはっきりちがいます。
個人差はありますが、みなさんが家族や友人、知人、有名人、はたまたすれ違った人の顔を見分けられ、覚えられるのと同じこと。
毎日見ていると顔はもちろん、体つき、歩き方、仕草などのちがいもはっきり見えてきます。

タラ:1年5か月齢

タラ:1年5か月齢

サト:1年5か月齢

サト:1年5か月齢

…全然ちがいますよね??
わたしはすっきり精悍なタラのほうが好みのタイプですが、いかがでしょう?
あどけない表情の多いサトもかわいらしいんですけどね!

そして、性格。
これまで哺育と飼育を担当してきたわたしの主観ですが、かんたんに言うとタイトルの通り「奔放な姉と押され気味の妹」。

姉のタラは、天真爛漫、自由奔放。

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放飼場を自由気ままに走り回り、おとなにも平気でちょっかいをかけます。
体も大きくなって体重は5kgを越え、力も強くなってきました。
少し前まで同じ空間に入って清掃をしていたのですが、すっかり成長し力も強くなったタラのたくましい跳び蹴りを受けたこともしばしば…
育ての親への恩は感じていない模様。
すくすく元気に育ってくれて、うれしい限りです。

一方の、「押され気味の妹」ことサトは、活発さに欠け、タラと比べるとちょっぴりおとなしめな性格に見えます。
生後2か月頃までは、なんにでも手を伸ばし、初めて見るものにも果敢に飛びつく無鉄砲ぶりを発揮してヒヤヒヤさせられましたが、今ではおてんば感はほぼゼロ。

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放飼場でもネットにぎゅっとしがみついて不安そうな姿がよく見られます。
本当はもっとお姉ちゃんと遊んでほしいんだけどなあ。

そこで、育ち盛りで活発なこどもたち(主にタラ)にたくさん運動して筋肉をつけてもらえるように!と、少し前にタラとサトの部屋の模様替えを行いました。

これまでもとまり木の位置を変更したり、ロープを張ったりしていたのですが、今回はさらにゆらゆら要素をプラス。
組んだとまり木そのものがゆらゆらするように、ロープで吊るしてみました。
ハンモックやブランコも設置。
ゆらゆらがいっぱい!

こちらの狙い通り、タラは思いっきり飛び乗り、ぴょんぴょんと部屋中を駆け回ってくれました。

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高さのあるブランコでも悠々とすごしています。
明らかに今までよりも行動範囲が増えました。

しかし、サトは…
おずおずとゆれるとまり木に乗るも、ゆれに驚いてすみっこへ…

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タラが大きくゆらしたりすると、さっと壁際へ寄ってロープにつかまるのがお約束。

サトにはゆらゆらが多すぎたかな?かえって行動範囲が少なくなってしまうかも?

しかし、観察を続けていくと、えいやっと思い切るように ゆらゆらなとまり木に飛び移るようになりました。
飛び移らなくても十分エサは食べられるし、ゆらゆらに飛び移る利点はないのですが、それでもエサを手に持ってはえいやっと飛び移り、ゆらゆらするとまり木の上でエサを食べるようになりました。

姉に比べると思い切りが足りないようですが、楽しんでくれているみたい?

タラもサトも、どうやらゆらゆらを選んでいるようです。

タラもサトも、どうやらゆらゆらを選んでいるようです。

人工哺育で育ったサルは、自然繁殖の個体よりも筋力が弱くなってしまうことがあります。
サルの赤ちゃんは、走ったり木に登ったりするお母さんのおなかに自分の力でぎゅっとしがみついて成長しますが、人工哺育だとそういうわけにはいかないからです(人工哺育の場合も、哺育器などを使わずに人が24時間抱っこして育てる方法が推奨されたりもしていますが、本物のサルのお母さんのようにアクティブ、もといアクロバティックな動きをするのは困難です…)。
タラとサトも、一日のうちの約18時間は飼育員の衣服に抱き付かせて育て、できるだけ筋力をつけるように心がけてきました。

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こちらはサトの哺育時の様子です

今のところ、筋力不足で困った様子などは見られませんが、筋力が十分であるかどうかの判断はできません。
もう2頭は人の助けが要らないくらい大きくなっているので、あとは生活の中で自然に成長していってくれるのを信じるのみですが、おとなたちとの同居などで、緊張して思うように運動できていない可能性もあります。

タラもサトも、いっぱい食べていっぱい遊んで、のびのびと立派なハヌマンラングールに育ってくれますように!

次回は、2頭に行っているハズバンダリートレーニングについてお話します!

著者プロフィール

川出比香里(かわで・ひかり)

1991年生まれ 埼玉県出身
専門学校を卒業後、埼玉県こども動物自然公園でのアルバイトを経て、2012年にときわ動物園就職。偶蹄類が好きでサルは大の苦手だったが、担当になるとあっという間に夢中になり、今では3児(すべてサル)の母。

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