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Vol.28 ハヌマンラングールのための環境エンリッチメント その1

2018.8.17

みなさんこんにちは!
平成最後の夏はすさまじい暑さとなりましたが、たのしい夏休みを過ごされているでしょうか?

   

さて、今回は環境エンリッチメントのお話。
動物園大好きな読者のみなさんにはもう耳馴染みのある単語かと思いますが、「環境エンリッチメント」は、人といっしょにくらす動物たちの生活環境をしあわせなものにするための様々な取り組みのことをいいます。当園でも、時間をかけてエサを食べてもらうように工夫したエサ入れを用意する、居場所を増やすためにとまり木やハンモックを設置する、などなど、様々な動物に対して様々な環境エンリッチメントを行っています。

このコラムでも、こんなふうにフィーダーを使うハヌマンラングールたちの様子をご紹介してきました。

 

しかし、環境エンリッチメントは

 

「時間をかけてエサを食べてほしいな~」
「フィーダー付けてみたらいいかな~」
     ↓
フィーダーつけてみたよ!OK!

 

…というだけでは本当はダメで、何のために、何を目指して行うのかをはっきりさせて、その動物の体のつくりや行動、生態に合わせた仕組みのツールや環境をつくることがとても大切です。さらに、実施する時には、その環境エンリッチメントが目的に合った効果をもたらしたのか、つまり動物たちが前よりしあわせになったのかを確かめることも必要です。
そして、その結果をもとにまた環境エンリッチメントを考えることで、さらに豊かな環境をつくり、動物たちのくらしをしあわせにしていくことができます。

   

環境エンリッチメントは全国の動物園で行われていますが、目標設定、計画、実施、記録、評価、さらに再調整をして次の目標設定につなげるサイクル(それぞれの段階の英単語の頭文字から“SPIDERモデル”といいます)を回して体系的に取り組めている現場は、そう多くはないのではないかと思います。
かく言う私も、実はそんなにきちんとできていません…

 

なかなか時間がとれないなど、色々な言い訳がありますが…
どんなふうに進めたらいいのかわからなかったり、記録や分析の方法がわからない…という悩みは、飼育員あるある。

   

動物たちをしあわせにしたい!でもわからない!
そんな悩める飼育員をたすけてくれるイベントに、先日参加してきました。
環境エンリッチメントの普及を推進する国際団体Shape of Enrichmentの日本支部・SHAPE-Japanが主催する実践型ワークショップで、飼育員や獣医師などの動物園関係者を対象に、理論を学んだ後に実際に動物園の動物の環境エンリッチメントに挑戦します。
三回目となる今年は「霊長類の多様性を探る」をテーマに、日本モンキーセンターで開催されました。

 

理論を学んだり研究者の先生方の講演を聞いた後、私は他の参加者の方々と一緒にシルバールトンとフランソワルトンの環境エンリッチメントを考えました。
この2種のサルは、ハヌマンラングールと同じく木の葉を主食にするリーフイーター(でも実は木の葉以外もたくさん食べているよ!と研究者の先生から教わりました)です。
特にシルバールトンたちは、食べものだけでなく、少し臆病な性格やなんだか面倒くさそうにエサを食べる仕草や雰囲気も、私が担当するハヌマンラングールたちにそっくり。

 

日本モンキーセンターのシルバールトン「バルカン」。
設置したフィーダーを操作しているところ…ですが、この後すぐに諦めてしまいました。

 

うちの子たちだったらどうするだろう?と常に考えながら取り組みました。

 

2日間のワークショップはあっという間に終わってしまいましたが、「サル」とひとくくりにすることはとてもできない霊長類の多様さを改めて学び、それぞれの種や個体に合わせた環境エンリッチメントを行うことの重要性を強く感じることができました。
(コラムではとてもお話しきれませんが、記録や評価の手法についてもたくさん勉強させていただきました!)

 

そこで、これまで取り組んできた環境エンリッチメントが、当園のハヌマンラングールたちにとってどうなのか、とっても簡単にではありますが評価をして、かれらに合ったものにしていこう!……というのを、これから数回に分けてお話してみたいと思います!

 

よーく考えてしあわせなくらしに近づけていくので、待っててね!

著者プロフィール

川出比香里(かわで・ひかり)

1991年生まれ 埼玉県出身
専門学校を卒業後、埼玉県こども動物自然公園でのアルバイトを経て、2012年にときわ動物園就職。偶蹄類が好きでサルは大の苦手だったが、担当になるとあっという間に夢中になり、今では3児(すべてサル)の母。

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