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Vol.16 ハズバンダリートレーニング その1

2017.1.16

みなさんこんにちは!
新年1本目のコラムとなりました。今年もときわ動物園をよろしくお願いいたします!
申年は終わってしまいましたが、今年もハヌマンラングールたちの話題をたくさんお届けしたいと思います。

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さて、今回は、ハズバンダリートレーニングのお話です。
最近全国の動物園水族館で話題となっている「ハズバンダリートレーニング」、どんなものかご存知でしょうか?
簡単に説明すると、動物の健康管理やケアをするために動物に協力してもらうためのトレーニングです。例えば、体重を測ったり、採血をしたり。ケガや病気をしたときのために、飼育員や獣医師に体を近くでよく見せてくれるようにしたり触らせてくれるようにすることなども含まれます。

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こちらは腕からの採血を目指してトレーニング中のシシオザル。

ハズバンダリートレーニングに必要なのは、動物との信頼関係!…も、もちろんですが、もっともっと大切なのは、科学的な考え方。飼育員が動物となかよしだから協力してくれるわけではなく(動物が飼育員を怖がるような状態ではもちろんできませんよ!)、科学的に根拠のある方法なんです。
行動の理論を理解して、動物の行動を客観的に見ることがトレーニングを進めるうえでとっても大切です。なーんて偉そうに話すわたしもまだまだまだまだ勉強中です。動物たちに教わりながら、頑張ります!

そんなハズバンダリートレーニング、ハヌマンラングールたちにも行っています。

今回は健康管理の基本の「き」、体重測定です。
トレーニングをしていない場合、サルの体重を測ろうと思ったら、網で捕まえて、ケージに入れて、体重計にのせて測ります(小さなサルや、よく人に馴れている個体では捕まえる必要がなくエサでつるようにして測ることができる場合もあります)。
これは捕まえられるサルにとっても、捕まえる飼育員にとっても、危険でストレスの多いやり方で、頻繁に行うことはあまり現実的ではありません。
そこで、ハズバンダリートレーニングの「動物に協力してもらう」方法を使います。

ミルクをあげていた頃は、小さなケージに入ってもらってケージごとはかりに載せていましたが、だんだんケージに入るのを嫌がるようになり、おとなたちと同じように自分で体重計に乗ってもらうトレーニングが必要になりました。

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体重計の前の金網をトントンと指で叩くのを合図に、体重計にぴょんと乗ってじっとしていてくれます。
そして、「OK」の合図のホイッスルを吹き、ごほうびをあげます。
(実はこの写真は長いしっぽが床についてしまっているまだ途中の段階です。実際はここから立ってもらってしっぽも含めた全身の体重を記録します)
乗っているのはタラ、体重は現在5.5㎏前後です。

ところで、ダイエット中の方を除けば 体重をこまめに測っている人はそんなに多くはないのではないでしょうか?
わたしも、サルたちの体重を週に1回測っているくせに自分の体重を最後に測ったのは2か月以上前のような気が…(知りたくないから、というのも理由のひとつ…)。
おとなになってしまえば、そんなに毎日増えたり減ったりするわけではありませんし、だいたいこのくらい、と自分でわかっていますよね。

でも、この「だいたいこのくらい」が動物園の動物たちには命取りになることも。
多くの哺乳類や鳥類の体は毛や羽で覆われていて、太った・痩せたという変化がわかりにくい場合があります。目に見えて痩せてしまってから体重を測ったら、びっくりするほどガリガリだった・おデブさんだった、なんてことになってしまうかもしれません。
観察することと合わせて、体重を数字で見て管理することがとっても大切なんです。

わたしたちは、おなかが減ったら食べて、食べすぎちゃったと思ったら節制して、もっと野菜食べたほうがいいかな~栄養バランス偏ってるかも~…などなど、自分でコントロールすることができます。
また、野生にくらす動物たちは、自分に必要なものをわかっていて、それらを自分で選んで食べているとも言われています。
しかし、動物園でくらす動物たちは、自分で食べ物を選べるわけではなく、飼育員が準備したエサしか選択することができません。だから、動物園の動物たちにとって、エサってとっても大切!そして、それを決めるために必要不可欠な体重を知ることも、とっても大切です!
このように、動物たちにとってものすごーく大切な健康管理を支えるのが、動物にも人にもやさしいハズバンダリートレーニングだと思っています。

トレーニングしなくても測れるんだから、わたしもちゃんと体重測ろう…

すっかり長くなってしまったので、また来月に続きます!
次回は体重測定以外のハズバンダリートレーニングのお話です!

著者プロフィール

川出比香里(かわで・ひかり)

1991年生まれ 埼玉県出身
専門学校を卒業後、埼玉県こども動物自然公園でのアルバイトを経て、2012年にときわ動物園就職。偶蹄類が好きでサルは大の苦手だったが、担当になるとあっという間に夢中になり、今では3児(すべてサル)の母。

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