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Vol.33 サギじゃない

2019.1.13

みなさんこんにちは!
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、2019年はじめてのコラムは、昨年10月に埼玉県こども動物自然公園からときわ動物園に仲間入りしたクロツラヘラサギのお話です。

 

変わった種名ですが、「黒い顔の、ヘラのようなくちばしを持ったサギ」と、特徴をとてもわかりやすく表しています。

黒い顔、先端が幅広でヘラのようなくちばし。
なるほどたしかにその通り!
とってもわかりやすい!

 

しかしなんと…クロツラヘラサギは、サギではないのです。

 

!?

 

明快な種名に感心していたのに、まさかのひっかけ!
クロツラヘラサギは、サギ科ではなく、同じペリカン目のトキ科の鳥なのです。
えええ…なんだか全然納得いかない。それならクロツラヘラトキでいいじゃない…

 

そもそもサギとトキって何がちがうの??

 

ということで、サギとトキの違いをかんたんにご紹介!
早速、体のつくりを見てみましょう。

(イラストのクオリティには目をつむりましょうね)
デフォルメのおかげで一目瞭然(?)ですね!
サギもトキも、どちらも湿地で魚をつかまえて食べる鳥。生息環境も食性も似ているのですが、体のちがいにサギとトキの一番のちがいが表れています。

 

ちがい①くちばし
サギは、よーく目で見て狙いを定めてから獲物をつかまえるハンタータイプ。
対するトキは、湿地の泥などにくちばしをさしいれて探ってつかまえる、ものぐさタイプ(トキのみなさん、ごめんなさい)。泥の中をごそごそ探るために、長く太く、やや湾曲した鎌のような形をしているんですね。クロツラヘラサギを含むヘラサギの仲間(実はトキの仲間)のくちばしは、小さな獲物をこしとって食べるためにしゃもじのような平たく広い形をしていてさらに特殊ですが、使い方を考えるとやはりトキ。

食べるのには便利なしゃもじも、体をかくには不便そう…

 

ちがい②あし
サギは、水深の深い湿地に降り立って魚を探すので、長い脚を持っています。一方のトキの足は、サギに比べて短いのが特徴。湿地といっても、田んぼのような浅いところでしか魚をつかまえることができません。

ちがい③くび
飛ぶ時の姿勢にも違いがあります。トキが首をまっすぐに伸ばして飛ぶのに対し、サギはトキよりも体に対する首の長さが長いので、バランスをとるために首を縮めて飛びます。まっすぐにしていると、重心が前になりすぎてしまってうまく飛べないとか。
ではなぜ首が長いのか、といえば、狙いを定めてスッと獲物をつかまえるため。
おお、つながりました!

 

ちょちょいと検索すれば大抵のことはわかってしまう時代になりましたが、姿かたちをじっくり観察して、どんなものをどんなふうに食べているのか、どんなところに生息しているのか、思い巡らせてみてから答え合わせをしてみると、もっと興味がわくかもしれません。
サルではなかなかこうはいかない(歯や内臓などよくよく調べていくとちがいが見えてきますが、鳥のほうがかなりわかりやすく形態に表れているのではと思います)ので、鳥っておもしろいなあと私もいちいち感動します。

       

飼育している動物園は全国8か所で、関東以外では同じく山口県の徳山動物園とうちだけ。
クロツラヘラサギは環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種)に指定される絶滅危惧種で、山口県には野生個体が飛来することもあります。

 

ときわ動物園から車で20分ほどのところにある「きらら浜自然観察公園」では、昨年、傷病個体の保護・リハビリ施設が完成し、クロツラヘラサギ保全事業が動き始めました。当園でも、傷ついた野生のクロツラヘラサギが保護された場合に獣医師が治療を行うなどの協力をおこなうことになっています。

   

埼玉からやってきた2羽の姉妹は、ときわ動物園でのくらしにも慣れてきたようで、落ち着いて生活してくれているようです。

体も小さく目立つ動物ではありませんが、愛嬌のあるユニークなくちばしを生かして頭をふりながら食べる姿は愛らしく、ひっそり(?)愛される存在になるでしょう。
野生のクロツラヘラサギたちの未来にも還元できるよう、かれらの暮らしぶりや魅力をお伝えしていきたいと思います。

 

次回は、新しいフィーダーを設置したㇵヌマンラングールの寝室の模様替えについてお話します。

著者プロフィール

川出比香里(かわで・ひかり)

1991年生まれ 埼玉県出身
専門学校を卒業後、埼玉県こども動物自然公園でのアルバイトを経て、2012年にときわ動物園就職。偶蹄類が好きでサルは大の苦手だったが、担当になるとあっという間に夢中になり、今では3児(すべてサル)の母。

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