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Vol.71 敬老の日に寄せて

2018.9.8

高く澄んだ青に白いうろこ雲が広がる、秋らしい空を見ることが多くなってきました。
ひと雨ごとに暑さが和らぎ、秋分を過ぎると夜も長くなります。猛暑と言われた長かった夏から秋へと少しずつバトンタッチしていることを感じますね。

秋の空

先月はショップのオリジナル商品についてたくさん紹介しましたが、飼育担当がラッコライブで宣伝してくれていることもあり、ぬいぐるみはたくさんのお客さまが手に取ってくださっています。レジで直接お渡しするときにはいつもより頭を深く下げてしまったり、館内で大事そうに抱っこしている子どもたちを見ると、とても嬉しい気持ちになります。

POPにもマナちゃん登場!

わたしは季節の移ろいを感じるのが好きなんですが、ショップのPOPを作るようになってからは、時季ごとのイベントを以前よりも意識するようになりました。
9月と言えば思い浮かぶのは『敬老の日』。ショップではおすすめの商品にこんなPOPを付けてみました。

敬老の日POP

わたしは小さいころに祖父母を亡くしているので、おじいちゃんやおばあちゃんに憧れがあり、あたたかい眼差しでお孫さんの手をひいてらっしゃる様子を見ると、いつも羨ましく思います。
今月はそんな敬老の日にちなんで、マナのおばあちゃん『チサ』のことを紹介します。

チサは1987年6月に長崎水族館で生まれた個体です。その後、1998年4月に母親の『サキ』、生後5か月のメスの子どもと一緒にマリンワールドへやってきました。

当時の長崎水族館

搬入当時の様子


当時、母親のサキは白内障でほぼ目が見えておらず、高齢のため輸送に耐えられるのか心配されましたが、余計なことが見えないのが良かったのか、搬入後の新しい環境も飼育員も割とすんなりと受け入れてくれた印象が残っています。

マナのひぃおばあちゃん サキ

一方チサは、ただでさえ神経質になる子育ての真っ最中だったので、動きや表情が和らぐのも餌を受け取るのも時間がかかりました。
そんな新しい仲間たちに、先輩方は餌の種類や切り方、その渡し方やタイミング、回数や時間など、たくさんの工夫をされていました。
入社1年が経ち、やっと1人で給餌させてもらえるようになったばかりのわたしには先輩方のような気遣いが出来ずにいつも怒られてばっかり。だけど、ピリピリしていたチサにとってはその気遣いのなさがちょうど良かったのか、わたしが給餌をするときは一番距離が近く、先輩方に「なんか、納得いかないなぁ・・。」と言われたことを今でもよく覚えています。

チサの当時の年齢は10歳。長崎水族館ですでに6回の出産経験がありました。
搬入後もすぐにマナのおじいちゃん『カイ』と仲良くなり、同年10月に子どもを出産。

1998年10月ナダ誕生時

当時から人気者だったラッコが増えただけでも嬉しい出来事だったのに、初のラッコの赤ちゃん誕生はマリンワールドにとって、とても大きなニュースとなりました。

そのチサが亡くなって、今年で15年です。
2018年8月末現在、国内の水族館で飼育されているラッコはわずか10頭となりました。

仲良しのリロとマナ

国内でのラッコの飼育数減少の要因のひとつに水族館生まれの個体の繁殖率の悪さがあげられます。
どうぶつたちは、わたしたちのように物事を自分で調べて知識をつけることは出来ませんので、色んなことは親や周りの個体を見ながら学んでいきます。繁殖や子育てについても同じことが言えるとすれば、今の個体たちはその機会がないに等しいのが現状です。

そのことをどれだけ嘆いても仕方のないことですが、今月の命日にも、わたしはチサと当時の懐かしい思い出話をして、日本のラッコたちの明るい未来を見守ってね、とお願いしようと思っています。

マナがお母さんになる日がきますように・・

著者プロフィール

土井 翠(土井 みどり)

佐賀県出身。1997年4月 マリンワールド海の中道に入社。
同年7月に展示部海洋動物課に配属後、アシカ・アザラシ・ラッコの飼育業務やショー運営を行い、現在に至る。
動物たちは我が子のようでもあり、友達でもあり、一緒に仕事をする大事な仲間。

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