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Vol.73 ラッコ心と秋の空?

2018.11.7

毎朝外に出たときに、少しずつ風の匂いが冬に近づいてきたことを感じます。
外出するとコートの襟を立てて歩く人を見かけることが多くなり、歩道にも落ち葉が目立つようになりました。道の端っこに寄ってザクザクとその落ち葉を踏みつけたり、木の実が落ちていないか探してしまうこの感覚がわたしはとても好きです。

秋空にジャンプ!

『秋』と言えば『食欲の秋』。今月はラッコたちのエサのお話をします。

まず、ラッコはとても大食漢だということはご存じの方が多いでしょう。
他の海棲哺乳類と違って体には脂肪がほとんどないため、体温を保つために食べたものをどんどんエネルギーに変え、常に熱を作り続ける必要がある、というのがその理由です。
マリンワールドのラッコたちはと言うと、それぞれが体重の5分の1。リロは約7㌔、マナは約4㌔のエサを毎日食べています。

リロの1回分のエサ

バケツから出すとボリュームがよく分かります

ごはん茶碗一杯が150gだとすると、リロは一日に約45杯分。一日5回の食事で毎回お茶碗9杯のご飯を食べている計算になります。体重34㌔のリロでこの量なので、皆さんもご自分の体重で計算してみたらきっと毎日は食べられない量だということがお分かりいただけると思います。
そして、食べるものですが、野生ではカニやアワビ、二枚貝、ウニやイカなどの無脊椎動物を好んで食べると言われています。極寒の海で餌を求めて潜っても一回の潜水で必ず獲物にありつけるわけではなく、何度も潜水を繰り返すこともあるため、それだけでもかなりの体力を消費することが想像できますね。

大きな口で食べるよ~

マリンワールドではスルメイカやウチムラサキガイ、ホタテガイ、サケやホキ(白身魚)などを与えていますが、水族館によってはアマエビなどの甲殻類やアジやシシャモなどを与えているところもあるそうです。

ラッコに限らず、飼育下の動物たちは飼育員が与えるエサしか食べることが出来ないので、その準備には細心の注意を払います。ですが、いつもと同じように用意していてもエサを食べない、ということもあります。それ以前に、クンクンと匂いを嗅ぐだけで受け取らないということもあります。
野生ではこの敏感な嗅覚で、餌が安全なものかどうか確認して食べるそうですよ。

何でもクンクン匂いを嗅ぐ!

我が家の食いしん坊姫も苦手な食べ物を「好かん!」と言ってプイッとすることがありますが、同じような感じで、エサを渡した瞬間に「これ、何か好かーん」と言わんばかりにポイッと捨ててしまうことがあります。
同じスルメイカでも、捕れた場所や時期によって身の質感や味が微妙に違うようでそれを敏感に感じ取るんでしょうね。その能力は素晴らしいのですが、こちらとしてはムッとしてしまうのが本音です。
マナは餌がどうこうというわけではなく、何となくずっとそわそわしているようです。
先日見に行った食事タイムのときも、餌をもらっていたのはリロだけでマナは途中から、アクリルガラスを無心にこすっていました。(笑)

モニターに映っていたのはリロの姿だけ

マナちゃんは他のことで忙しそうでした 笑

ヒトの世界にも、愛情に限らず喜怒哀楽の感情が激しいことや物事に対して移り気なことを示す『女心と秋の空』ということばがありますが、今のマナはまさにそんな感じかもしれません。

色んなことが気になると

秋は過ごしやすいけれどあっという間で、このあとすぐに冬がやってきます。
マナちゃんの心が、空気の澄んだきれいな冬の空のようにすっきりと晴れて、来月には楽しいクリスマスを迎えられたらいいな、と思っています。

リロは大丈夫よね?

著者プロフィール

土井 翠(土井 みどり)

佐賀県出身。1997年4月 マリンワールド海の中道に入社。
同年7月に展示部海洋動物課に配属後、アシカ・アザラシ・ラッコの飼育業務やショー運営を行い、現在に至る。
動物たちは我が子のようでもあり、友達でもあり、一緒に仕事をする大事な仲間。

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