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Vol.11 わが町に舞い降りたタンチョウ

2013.2.13

タンチョウと言えば国内では釧路周辺にしか生息していないのですが、私が住む石川県内の広大な干拓地にタンチョウ1羽がいるという報道が流れたのは1月10日過ぎのことでした。釧路のタンチョウは移動しないので、どうやらこれは中国大陸のタンチョウが渡りの際に迷って日本に飛来したようです。数年前にも石川県内にタンチョウが飛来したことはあるもののやはり珍しいことです。それに今回は立派な成鳥のタンチョウと言う事で、その美しい姿を北海道ではなく石川県内で見られるというのは願ってもない幸運です。そのようなことからも県内外から連日のようにタンチョウを見ようという人たちが、この静かな干拓地に訪れています。そして私の自宅から車で15分も走らせば観察できる近距離だったのは何より嬉しかったことです。

タンチョウと言えば、25年ほど前に2度ほど釧路へ撮影に行ったことがあります。一時、数年かけて継続して撮影しようと思ったほど思い入れがあったので、私の頭の中は年明けからタンチョウ一色と言った状態です。しかしながらいるのはたったの一羽であり、広大な潟と干拓地内と言うこともあり見つけられない日もあるのです。

ところで日本のタンチョウですが、明治の末には絶滅したと考えられていたものが大正13年にごくわずか発見されました。その後冬季の給餌活動により現在の釧路のタンチョウが存在しているのです。

里山とは人と自然とが関わり合う中で豊かな環境が生まれ、多くの生きものが暮らす場所です。同様に釧路のタンチョウは手厚い保護で人々と密接にかかわって生きている鳥です。里山に日本の心があるようにタンチョウも日本の心なのです。今回、北陸の里の干拓地に舞い降りたタンチョウを取材しながら釧路のタンチョウに思いを寄せ、共に日本の原風景的存在であるとつくずく実感したものでした。

過去、釧路で撮影したタンチョウの写真がありますので、そちらもいずれ紹介したいと思います。

国内では釧路周辺にのみ生息するタンチョウが、今年一月に石川県で発見。
餌は、田んぼのイネの根などをよくついばんでいた。

実は、石川県内では5年ぶりと言う中国からの珍客だったのです。
河北潟と言う広大な潟を干拓した農地に降り立った。

雪が降った後の干拓地とタンチョウはよく似合い美しさが際立って見える。

翼を広げると2m40cmもある大きな体で飛翔するにはかなりの助走が必要なようだ。

体が浮くと旋回しながら風を捉え、そして徐々に上昇してゆく。

優雅な飛翔スタイルはタンチョウならではと言う感じで惚れぼれします。

ある吹雪いた日もやはりいつもの場所でいつものように過ごしていた。
結局この地での越冬を決め込んだかのようで、連日のように観察することが出来た。

こんなわが町の里に降り立ったタンチョウだが、実にしっくりと景色になじんでいた。
タンチョウと言えば日本の昔話には欠かせないような存在だが、このような光景が昔から人々の心を捉えていたに違いない。

著者プロフィール

森勝彦(もり・かつひこ)

1963年石川県生まれ。立山の大自然とその地で生きる雷鳥に心を奪われライチョウ撮影がライフワークとなる。そののちブナ林にいのちを感じ雑誌に発表する。現在、里山こそいのちの原点であると多角的に撮影中。1997年 写真集「奇跡の鳥ライチョウ」(山と渓谷社・2010年 写真集「雷鳥―神々の使者」(TECS)出版。

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