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Vol.7 ミヤマカミキリの夜

2012.8.23

夏の間、クヌギやコナラの樹皮から流れる樹液には多くの昆虫が集まります。樹液を食するチョウやガ、甲虫類などの仲間です。その中のミヤマカミキリは、私が住む居住エリアで昨年大発生しました。あるクヌギの木には、ざっと30匹は確認でき、その周辺の樹木・電柱・道路上におびただしい数のミヤマカマキリが見られ、広範囲に及んでいました。ところが今年は全く発見出来ないのです。不思議に思って調べてみると、ミヤマカミキリは産卵から4年目に成虫になるようで、発生には周期性があるのでしょうか。

樹液が流れるメカニズムとしては、カミキリムシやボクトウガがクヌギなどの樹木に産卵し、その幼虫が木の内部に傷をつけたり、スズメバチが樹皮を傷つけることで樹液が流れます。

ところが、近年、雑木林の昆虫が激減しているようです。要因は明らかで、里山の広葉樹林から杉林への転換や、開発造成による雑木林の減少と、林業の衰退による雑木林の荒廃です。

シロスジカミキリの研究報告の一例ですが、幼虫は直径15センチ以下の樹木の地表よりそう高くはないところに産卵する特長があります。里山荒廃は、樹木と下草の成長が進行して林内空間も減少。こういう環境はシロスジカミキリの繁殖に打撃を与え激減したといいます。

ミヤマカミキリも樹液をもたらす重要な昆虫として位置します。昨年大発生で、今年姿を見せないのは周期性か異変か本当のところはわかりません。しかし、全般に昆虫が激減していることは、細やかな自然サイクルが機能していないことの表れです。私たちは、いのちの原点である里山の現実をしっかりと認識する必要がありそうです。

夏の雑木林。ここは管理された雑木林だが、管理されない雑木林は昆虫にとっても不都合らしい。

カミキリ虫の幼虫やボクトウガの幼虫が木の内部を傷つけることにより樹液が流れる。
樹液を求める他の昆虫にとてもいのちのオアシスとなる。

カミキリ虫が木の内部でさなぎになり、成虫として出てきた穴から樹液が流れる。
交尾しながら頭を樹皮に突っ込み樹液を頬張る光景はよく見る。

木の内部の樹液の脈に口をつけることで十分な樹液を得ることが出来るのかもしれない。

貴重な樹液をめぐっては、当然のように争いも勃発する。

夜間、薄明かりのなかに浮かび上がったミヤマカミキリの光景に、この営みを絶やしてはいけないと強く感じた。

著者プロフィール

森勝彦(もり・かつひこ)

1963年石川県生まれ。立山の大自然とその地で生きる雷鳥に心を奪われライチョウ撮影がライフワークとなる。そののちブナ林にいのちを感じ雑誌に発表する。現在、里山こそいのちの原点であると多角的に撮影中。1997年 写真集「奇跡の鳥ライチョウ」(山と渓谷社・2010年 写真集「雷鳥―神々の使者」(TECS)出版。

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