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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.43 雪景色の森

2017.1.14

 雪が降った朝の冬の雑木林は静寂の世界となり美しいものです。殺風景な冬の景色も雪が覆い隠してくれ、夢が広がる世界を演じてくれるからです。全てのいのちが消え去ってしまったかのような冬の森を白い妖精が支配したかのように。
 しかし実際には多くのいのちがしっかり息づいています。見かけなくなった昆虫も冬越ししているでしょうし、鳥だっています。多くの動物たちも雪の森で生きている事でしょう。冷え込んだ雪の朝はそんな全てを消し去って別世界を演じているのです。
 降雪後の天気の良さそうな日を選び、未明の真っ暗な中を近くの森に出向いてみました。見えるのは自分のヘッドライトが照らす足元のみですが、雪の質感や肌にあたる空気感が冬の朝を存分に楽しませてくれます。時おり見つけるケモノの足跡もさらに私の気分を高揚させてくれるのです。そうこうしているうちに、東の空が白みかけてゆき透明感ある空の東は徐々に朱に染まりその色は鮮やかさを増していきました。冬の朝を一人占めしたような感覚の中、ひとつ大きく深呼吸してその空の変化を楽しんでいました。
 辺りが徐々に明るくなる森の中で、ふと目についたのが新雪に覆われた桜の木でした。冬のやわらかな朝焼けの空をバックに見る桜の木は凛として美しく、春の桜以上に感動するほどでした。桜の花は可憐な色合いで、さらに一斉に咲くその美しさから人々の心を魅了します。でも私は冬の朝の雪に覆われた桜の木からいのちの確かな息づかいと躍動感が伝わってきて、春の桜に引けを取らない美しさと感じました。
 街中でも雪が降った朝は庭木や街路樹が一斉に雪化粧して美しいものです。でもやはり一人森の中で迎える朝は格別でこだわりがあります。この冬もまた森に出向いてみようと思うのですが、また別の感動も待っているような気がしてきて、そういうのも楽しみなのです。

雪化粧の桜

雪化粧の桜

アオジ

アオジ

ホンドタヌキ

ホンドタヌキ

ホンドテン

ホンドテン

著者プロフィール

森勝彦(もり・かつひこ)

1963年石川県生まれ。立山の大自然とその地で生きる雷鳥に心を奪われライチョウ撮影がライフワークとなる。そののちブナ林にいのちを感じ雑誌に発表する。現在、里山こそいのちの原点であると多角的に撮影中。1997年 写真集「奇跡の鳥ライチョウ」(山と渓谷社・2010年 写真集「雷鳥―神々の使者」(TECS)出版。

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