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Vol.53 山女の渓

2020.8.5

 自分自身のことなのですが、当初里山と言うと雑木林ばかりのイメージが広がっていったものでした。しかし、実際に里山に通うようになると里山とは山のみにあらずと言えることがわかってきたのでした。そこには田園風景があり人々の暮らしもあるのですが、多くの生き物も生活しています。その中でも意外に見落としがちなのが魚の存在です。
 子供のころは昆虫採集もしたけれど、よくフナ釣りに夢中になったものでした。大人になってからほとんど釣りはしなくなったのですが、最近はフナ自体が減ってしまったからか、フナ釣りの光景はほとんど見かけません。専門的には調べていませんが、環境の移り変わりも大きいでしょう。
 さて、里山・魚とキーワードが来れば、出てくるのはヤマメの存在かもしれません。サクラマスという魚がいますが、実はヤマメもサクラマスも同種ということになります。降海型となって海に向かうのがサクラマスで、陸封型として渓流に留まり生活するタイプがヤマメです。その大きさは20㎝程度で、川幅の広い本流部では30㎝以上のものもいるとか。一方、サクラマスは大きなものでは60㎝以上にもなります。このように生息環境の違いが、同種とは思えないような違いとなって魚体に現れるようです。こういった部分はこの種の面白みだと思うのです。
 ところで、ヤマメは漢字では山女と表記されます。一説にはヤマメの見た目の美しさからだとも言われますが、ヒラメやアイナメのように魚の名前の最後に「メ」をつけることが多く、この「メ」は魚の意との事から、語源的には山魚(ヤマメ)と漢字表記するのが正しく、ヤマメを山女と表記するのは当て字のようです。
 さて、最近では天然の渓流魚が極めて貴重と言われるようにほとんどが放流魚であると知人から教わりました。そんなマメ知識を頭の中で巡らせながらファインダー越しにヤマメに接すると非常に愛着が湧いてくるのでした。

ヤマメ・山女と書くだけその見た目はとても美しい

夏の清流で見られ宝石のように輝く美しいハグロトンボ

本流に流れ込む支流にはヤマメの住む清流がある

著者プロフィール

森勝彦(もり・かつひこ)

1963年石川県生まれ。立山の大自然とその地で生きる雷鳥に心を奪われライチョウ撮影がライフワークとなる。そののちブナ林にいのちを感じ雑誌に発表する。現在、里山こそいのちの原点であると多角的に撮影中。1997年 写真集「奇跡の鳥ライチョウ」(山と渓谷社・2010年 写真集「雷鳥―神々の使者」(TECS)出版。

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