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Vol.54 里山から見た多様性

2020.9.4

 何やら非常に難しそうなテーマを掲げていますが、専門家ではないので、百聞は一見にしかずとの言葉にあやかりながら里山の良さや一写真家の見た生物多様性を切り口に書いてみたいと思います。
 地球上の様々な生物がそれぞれに関わり、ある種が生きていくうえでも様々なエリアを行き来する場合もあります。支え合うだけではなく食う者食われる者といった捕食関係も存在します。
 近年里山は失われつつあります。皆さんがそれぞれに住まわれている環境で以前は水田であったはずが耕作放棄地になっていませんか。山が管理されずに荒れていませんか。水田から多くの生き物が消えたと感じませんか。これ等は身近ですが非常に大きな問題も含んでいます。
 トキやコウノトリが生きていくためには餌となる農薬を使わない安全で豊かな水田の生物環境が必要です。また本来アカマツが無ければコウノトリは営巣できないのです。ドジョウはすっかり見かけません。水田周辺の代表的水棲昆虫のタガメは絶滅危惧種となりました。山が荒れてイノシシが異常に増えたために様々な被害が出ています。こう書くと里山の機能や重要性は凄い!と感じませんか。
 私の住環境でも耕作放棄地が増えていましたが、今そこで里山再生プロジェクトが動いています。付近の河川改良で出た土砂を水はけの悪いエリアの土壌改良に使い、付近の湧き水や古くから活用して来た水源を活かして池も作り出しています。このプロジェクトで行われた耕作整備や保全活動により、ボランティア活動を呼びかけるなどして継続的に地域も活性化していきます。当然生き物達にも豊かな環境を生み出しより良き多様性が実現します。
 さほど広くないプロジェクトアリアですがサギが飛来し、昆虫やカエルなど驚くほど多く存在していました。どれほど生き物が里山の環境に依存しているかがわかります。見たすべての生き物を紹介は出来ませんが、里山の本来の豊かさや素晴らしさを伝えられればと思います。

朝露のレンコンの葉には多くのアマガエルがいて躍動感を感じた。

耕作放棄地での里山再生プロジェクトでは生き物の豊かな環境を再生するだけでなく、様々な活用により人々にとっても豊かな環境を作ろうとの試み。里山を体験学習できるエリアでもある。

天然の湧き水と水路の活用で浅い池を作り、今後ここでのさらなる豊かな生物相も育まれるはず。

レンコン畑エリアでも様々な昆虫がいた。イナゴを食する生き物にとっては重要なたんぱく源。プロジェクトエリアに田は無いため近隣水田からの飛来かもしれないが、なぜか多くのイナゴがレンコン畑にいた。結果的に害虫というより豊かな生物相の一部になるのか。

子供の頃はよくトンボの大群を見かけたものでした。トンボが普通に群がる光景は里山の魅力も広がることになるはず。

著者プロフィール

森勝彦(もり・かつひこ)

1963年石川県生まれ。立山の大自然とその地で生きる雷鳥に心を奪われライチョウ撮影がライフワークとなる。そののちブナ林にいのちを感じ雑誌に発表する。現在、里山こそいのちの原点であると多角的に撮影中。1997年 写真集「奇跡の鳥ライチョウ」(山と渓谷社・2010年 写真集「雷鳥―神々の使者」(TECS)出版。

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