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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.40 里山の深山部

2016.5.26

 里山と書くと身近な山で険しいものを感じないものだが、それは道路や集落が存在する地域だけをイメージしているに過ぎないのかもしれない。実際には里山は以外にも奥が深く、それは里山の谷沿いに流れる渓流部に入ると実感できる。もちろんかつての里山では奥深い地域であっても人の暮らしがあり水田などの耕作地が普通に見られたはずです。しかし、最近ではそう言った地域での耕作は放棄される傾向にあり、人の生活感がない荒れた林となりつつある。人と動物との緩衝地帯という役割があった里山のおかげで動物は人里まで現れにくかったのだが、昨今の現実は里山が荒れて人と野生動物の棲む領域がつながってしまっている。
 里山から渓流沿いに遡行するために山に入ってみた。かつては小さな水田がいくつも存在したであろう一帯は夏草や雑木が茂り、荒れてしまっており、そこでは最近増えているとされるカモシカと遭遇。さらに谷に降りて渓流付近まで歩いてみると、ツキノワグマの大きな足跡を発見した。この場所は里山とはいえ奥山的な深いイメージが強く、野生動物達のエリア真只中にいることを実感した。集落からこの谷の間に存在していた農耕地は雑木林化しているために緩衝地帯が存在せずに野生のエリアと完全に繋がっていると実感した。 谷に下り渓流の流れにそって遡行したわけだが、驚いたのは渓流沿いの景観の素晴らしさだった。何でもない里山のただの谷ではあるのだが、谷に入ってみないとわからないものである。溪谷の森ではニホンザルが樹上を走り去っていくのも見ることができた。もちろん渓流ではその主ともいえるイワナが静かにいのちを繋いで生きているのである。渓流では毒蛇ヤマカガシと超至近距離で遭遇するものの基本はおとなしい蛇のようで、そのまま静かに去っていった。
 里山の深山部は野生の領域であり、自分などは非常に刺激的な感動に満ちた場所であったわけだが、農耕放棄地帯が荒れ果てたことにより動物が人里に簡単に進出している日本の里山の現状が見えたような気がした。

里山のやや奥まった地域の集落を訪れてみた。知る人によればかつては水田などの農耕地が存在したらしいが今はその面影はなかった。 そこからほんのしばらく谷を下ると綺麗な渓流が存在し様々ないきもの達に出会うことができた。

里山のやや奥まった地域の集落を訪れてみた。知る人によればかつては水田などの農耕地が存在したらしいが今はその面影はなかった。
そこからほんのしばらく谷を下ると綺麗な渓流が存在し様々ないきもの達に出会うことができた。

そこには天然のイワナが脈々といのちを繋いで静かに息づいている。

そこには天然のイワナが脈々といのちを繋いで静かに息づいている。

渓流部では猛毒のヤマカガシを見ることができた。性格はおとなしいようで、こちらがそっと見守ってやれば攻撃してくることはあまりないと言われる。

渓流部では猛毒のヤマカガシを見ることができた。性格はおとなしいようで、こちらがそっと見守ってやれば攻撃してくることはあまりないと言われる。

カモシカもいたし一瞬だったがニホンザルは 沢沿いの樹上を走り去っていくところも見た。

カモシカもいたし一瞬だったがニホンザルは
沢沿いの樹上を走り去っていくところも見た。

また、大きな熊の足跡もあった。里山で暮らす人が減少し管理の手が入りにくくなることで、里山の重要な機能(動物と人との境界)を失い、これら森のいきものが人里に出てきやすくなる。最近取りざたされるクマやイノシシなどとの無用な衝突を避けるためにも里山が荒れ地になることなく管理されることが重要なのだと実感した。

また、大きな熊の足跡もあった。里山で暮らす人が減少し管理の手が入りにくくなることで、里山の重要な機能(動物と人との境界)を失い、これら森のいきものが人里に出てきやすくなる。最近取りざたされるクマやイノシシなどとの無用な衝突を避けるためにも里山が荒れ地になることなく管理されることが重要なのだと実感した。

著者プロフィール

森勝彦(もり・かつひこ)

1963年石川県生まれ。立山の大自然とその地で生きる雷鳥に心を奪われライチョウ撮影がライフワークとなる。そののちブナ林にいのちを感じ雑誌に発表する。現在、里山こそいのちの原点であると多角的に撮影中。1997年 写真集「奇跡の鳥ライチョウ」(山と渓谷社・2010年 写真集「雷鳥―神々の使者」(TECS)出版。

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