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Vol.18 耕作放棄のつらいわけ

2013.11.5

 前回のコラムでは耕作放棄がイノシシ被害につながると言った内容を書かせていただいたのですが、その耕作放棄にいたってしまうわけの一例を今回は紹介してみたいと思います。

 わたしが勝手に「イノシシ谷」と命名して継続的に取材をしている石川県内のある里山なのですが、例にもれずといった具合に耕作放棄が進んでいます。かつてはこの山間地の谷間に広範囲に水田が続いていたと思われるのですが、現状はわずかに残された田んぼがあるのみ。この田んぼの奥は豊かな里山、、、と言えればいいのですが、現状は草木が茂りジャングル化してしまっています。そこではイノシシが生活するようになったようでイノシシの痕跡が多数あります。

 今年、その「イノシシ谷」でわずかに残った田んぼを見てきたのですが、春には水田脇にイノシシの足跡が見られたものの特別に被害もなく9月の収穫時期を迎えたのでした。しかし残念なことに9月3日に豪雨に見まわれたことで田んぼ脇の水路が決壊し、大量の泥水が流れ込み収穫前の稲は壊滅的な被害を受けたのでした。

 山間部ではあり得る被害かもしれませんが、これをきっかけにその田主さんは今後の水田の耕作放棄を考えているとのことでした。少し話を伺う事が出来たのですが、高齢になり後継者もいないからとのことでした。残念なことですが、これが今の日本の現状そのものだと感じます。この田主さんは、かつてはこの谷のずっと奥の方まで8枚ほど耕作していたらしいのですが、そんな田園風景の痕跡は今は無く、ここにかろうじて残った田んぼも消えようとしているのです。わずかに残った田園風景も今後はジャングル化してしまうのでしょうか。

 里山とは人の住む環境と生きもの達との緩衝地帯だったはず。それが崩壊することで、どうぶつ達の住み処と人々の住空間が直接つながってしまい、近年目立ってきたどうぶつ被害という問題がもたらされています。

 私自身これまで無関心だった里山環境。しかし、今何が問題で何が大切なのかを生きものや里山の現状を通じて学ばされる思いです。

勝手に命名した「イノシシ谷」の収穫前ののどかな光景。ここはこの谷の最終耕作地となってしまっているが、かつては後方の山の裏側までこのような美しい田園風景が広がっていた。

紐を張り巡らした様子からどうぶつ被害の深刻さもうかがえる。

この一帯のかつての耕作地は今となってはそのような田園風景の面影はなく、 草木が茂り荒れ放題となり3年前からはイノシシが里に出てくるようになったらしい。

愛らしいうり坊もここでは厄介者。本来臆病で人里には出てこないイノシシも荒れた里山は絶好の生息地のようだ。

この谷の最終耕作地を守ろうと頑張ってきたところだが、9月の大雨で水路が決壊し、収穫前の稲は壊滅的被害を受けた。

10月のある日、決壊した水路を一人で修復するこの田んぼの耕作者さんがいました。何とか守ってきたこの谷の山側での最終耕作地。しかしこの先ここでの耕作もやめてしまおうかと話されてました。高齢になったのと後継者がいないためだと話していた。

水路の修復に励むものの、この谷での耕作を守りきれない寂しさがにじみ出ていたように感じた。里山保全は厳しいと言うのが今のわが国の現状なのである。

著者プロフィール

森勝彦(もり・かつひこ)

1963年石川県生まれ。立山の大自然とその地で生きる雷鳥に心を奪われライチョウ撮影がライフワークとなる。そののちブナ林にいのちを感じ雑誌に発表する。現在、里山こそいのちの原点であると多角的に撮影中。1997年 写真集「奇跡の鳥ライチョウ」(山と渓谷社・2010年 写真集「雷鳥―神々の使者」(TECS)出版。

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