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Vol.17 温厚なイノシシと里山現状

2013.10.8

 なにか意外なタイトルですが、カメラ取材によってあくまでも客観的にイノシシと近年の里山環境と獣害問題をひっくるめて見つめてみました。

 近年(ここ10年ほど)里山や居住域でのイノシシの獣害について問題視されるようになりました。かんたんには里山の林業の衰退や、山間地の農耕放棄地の増加が原因でイノシシが山から出てきやすくなったと言う事のようです。要するに、林は間伐がおろそかになり田んぼは放棄されることで視界の悪い藪地帯が増えたということ。そのような環境が好きなイノシシにとって今の里山は好都合な場所になったわけです。 実際にあちこちの里山を歩いてみるとイノシシ被害は深刻なようで、イノシシが触れると感電するような電気柵を用いていたり、大きな鋼鉄フェンスを張り巡らして動物と人との生活空間の分離を試みていたりもします。しかし、それでは効果が上がらず問題が深刻であれば、有害獣駆除となり仕方なく捕獲作戦ともなってきます。実際にもいくつかのイノシシ檻の設置場所も見てきましたが、その行く末を考えると可愛そうなことでもあり、生きもの好きにはやはりいろいろと考えさせられます。

しかし、ちょっとホットな現場も見てきました。ある里山で小屋のようなものがあり、中を見ると100kgはありそうな非常に大型のイノシシがいたのでした。この小屋はイノシシを飼うための檻だったのです。このイノシシはとても人に慣れているようで温厚なイメージでした。飼育環境も良好なようで新鮮な水がいつでも飲める環境でえさも多分充分に与えられていると思いました。野生のイノシシの性格も実際に温厚らしく、猛スピードで走りまわるのは何かに驚いた時だけらしいのです。さてこの小屋の中のイノシシは、子供のころ保護されて以来飼われているような感じで、同じイノシシでも駆除されるものもあれば、このように人に可愛がられて生きているものもいます。一番大事なのは人と動物が共存できる環境なのでしょうが、そんなことよりも目の前の巨大なイノシシが愛らしくて、凶暴だと言う自分の中のイノシシへのイメージは一変してしまったわけでした。

イノシシの被害がよく聞かれるが、見た目とは裏腹に本来臆病な動物らしい。

いま注目されている里山も人とどうぶつ達との共存で揺れ動いている。

田んぼの畦がイノシシによって掘り荒らされてしまっている。

④ 耕作放棄地が荒れ、藪や雑木林になり見通しが悪くなるとイノシシの好む環境となる。 そのような場所でイノシシは泥浴びを好んで行うが、その場所をヌタ場と呼ぶ。 イノシシノ足跡も見られ、この場所もきっとそうであろう。

里へイノシシが入るのを阻止するために広範囲にこのような鋼鉄製フェンスを張り巡らせているところもある。よほどの深刻さがうかがえる。 最近は電気柵なども田畑でよく見られる。

あまりに被害が後を絶たなくなると捕獲駆除となってしまう。 しかし対処療法でしかなく、これもイタチごっこでしかないのかもしれない。

本来里山は人と動物との緩衝地帯であり、これが存在するおかげで互いに住み分けが出来ていたのだと思う。ただ里山の機能がだんだん失われ、そんなバランスが崩れかけてしまっているように思える。

ただそんな中、うり坊のころから大事に飼われているイノシシがいた。人に慣れているようで、おとなしく温厚な感じであった。実は野生のイノシシも性格は温厚なのだと言う。皮肉なことに野生でいるよりも幸せなのだうか。

著者プロフィール

森勝彦(もり・かつひこ)

1963年石川県生まれ。立山の大自然とその地で生きる雷鳥に心を奪われライチョウ撮影がライフワークとなる。そののちブナ林にいのちを感じ雑誌に発表する。現在、里山こそいのちの原点であると多角的に撮影中。1997年 写真集「奇跡の鳥ライチョウ」(山と渓谷社・2010年 写真集「雷鳥―神々の使者」(TECS)出版。

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