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マレーに首ったけ Vol.10

2012.4.10

日本列島にも今頃になってやっと春が来たという感じですが、今回も引き続き春にふさわしい「ハニイ」の話題をお伝えしたいと思います。

今年もおいしくできました。

話しはちょっとさかのぼりますが、今年最初の大きなイベントとして”恵方巻きのプレゼント”を行いました。これは今年で4回目となる恒例イベントで、文字通りマレーグマに恵方巻きをプレゼントするのですが、実はこの企画はマスコミの人たちの集まり方が全然違うんです。きっちり2月3日にやることもあり、よく節分のニュース映像で流れる幼稚園児たちの豆まき行事のような時事風景として使ってもらえるようで、何と高知県内にある全てのTV局と新聞社が毎年取材に来てくれます。もちろん大変ありがたいことですが、ハニイ誕生のときも展示訓練を開始したときでも、こんなには集まってくれないので、正直ちょっと複雑なところではあります。

初めて見る恵方巻きに警戒気味。

与えるのはもちろんマレーグマ用の特製恵方巻きです。メインの具である動物用ソーセージにパンとノリを巻いてコマツナやインゲン、ニンジンなどを具のようにあしらい、ビジュアル面にも気を配った仕上がりとなっています。

この頃はまだハニイは木に登ることが出来なかったため、床面での挑戦となりましたが、ちゃんと2本足で立って上手に食べていました。もちろんタオチイの方は子育て同様に恵方巻きでも大ベテランなので、まさに”かぶりつき”という感じでした。

え?ちゃんと方角は正しかったか?まあ、その辺は大目に見てあげて下さい。これできっと今年一年ものいちのマレーグマファミリーにとって良い年となることでしょう。

でも食べてみたら「オイシー!」

それから、ハニイが木登りの練習に明け暮れて、とうとう2月に2m10cmある最初の枝まで登れるようになったことは前回お伝えしましたが、実はあの後すぐに頂上までたどり着くことができたんです!本当にハニイは成長が著しく、しかも運動能力に長けているようです。

ところがその後はそんなに順調ではなく、最初に到達した日に約4.5mの頂上からモルタル製の床面にダイレクトに落ちるという驚愕のアクシデントが起こりました。ちょうど目撃された方から「落ちてスゴイ音がして、後ろ足を突っ張ったまま動かさない」という通報があったので、正直骨折を覚悟して駆けつけたのですが、現場に到着した時にはもう平気で動いていて、見ている前で再び頂上までするすると登っていました。ホッとすると同時に、改めて野生動物の持つ肉体の強さに驚かされました。

また、その後も得意気にすぐ登るのはいいのですが、そのまま降りられなくなって、夕方の収容に時間がとてもかかったり、ということもしばらく続き、さんざん担当者の手を焼かせてくれました。

タオチイの見事な”かぶりつき”

と、このようにスゴイ勢いで成長しているハニイですが、親子関係となると、ちょっとこれまでとは違うところがあります。というのも、ハニイの成長ぶりを見て「この分だと頂上までたどり着ける日もそう遠くはないし、きっとタオチイは気が気でないだろうなぁ」と実は私たちは心配していたんです。

なぜかと言いますと、頂上という場所は子育てに疲れたタオチイがゆっくりと休む大事な大事な聖域なのです。一緒にいるときは終日子どもが傍らにいて何かとちょっかいを出してくるので、落ち着くことが出来るのはこの場所しかありません。午後は必ずタオチイが頂上で熟睡し、下から呼び続けてあきらめた子どもが仕方なく床面で寝る、というのがこれまでのパターンでした。それがハニイの場合は全く見かけないので不思議だったんですが、結局床面に置き去りすることなど一度もないまま、ハニイは頂上に到達してしまいました。

上がハニイ、下がタオチイです。

そして、逆に最近では午後になると毎日ハニイが頂上を指定席にして熟睡しています。その姿はまるで”オヤジ”。本当に父親のワンピイにそっくりで、苦笑するしかありません。 ハニイの親離れが早いのか、タオチイの余裕なのかは分かりませんが、これまでにはない親子関係であることは間違いないようです。

と、こんな感じの春のマレーグマファミリー、ますます目が離せないのは間違いありませんよ!

ワンピイではなくハニイです。

著者プロフィール

本田祐介(ほんだ・ゆうすけ)

高知県立のいち動物公園 飼育課長補佐
学芸員

熊本県出身
1991年 宮崎大学大学院農学研究科修士課程 卒業
小学生の頃に何度も読んだ、少年ジャンプ連載「ぼくの動物園日記」(飯森広一・作)に多大な影響を受けてこの業界へ。
1991年 高知県立のいち動物公園の開園時より初代飼育スタッフとして勤務。
その後マレーグマ、オオアリクイ、アミメキリンなど様々な動物種を担当。
2010年~種保存委員会・マレーグマ種別調整者に。

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