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Vol.19 ゴマフアザラシ

2013.1.2

ゴマフアザラシはベーリング海とその北部のチュクチ海を上限にし、オホーツク海、日本海、太平洋北部に主に分布。
気温が下がる11月頃になると北海道へ来遊し、これが分布域のほぼ南限だ。

彼らは海氷や流氷の上で出産する習性があり、北海道へは出産のために訪れる―。

未開の地を思わせる風景。

これ以上の北海道への来遊の説明に関する情報を探してもなかなか見当たらない。
それしか理由が無いのか?なぜ北海道に?‥といった疑問が湧いた。

(習性)で片付けられてしまう領域なのだろうが、仮説を立ててみる。

一つは、現在の季節はアムール河の河口とサハリン周辺で海氷が形成されつつある時期だ。 海氷が高密度に覆い尽くすオホーツク海北部はアザラシの生活を妨げてしまうのでこの海域の個体が南下、こうして適当な密度の流氷帯が3~4月に点在する北海道で出産待機?。

落ちゆく夕陽に染まる。

二つ目は、水温や気温。
アザラシ類は10属19種に分けられるが、熱帯や極地まで広く生息している。
オホーツクのゴマフアザラシは寒すぎるのが苦手?。
けれども、オホーツク海より北のベーリング海周辺の生息が説明できない‥ちょっと弱い説だ。
もっとも、増加をたどる北海道の(日本海や太平洋の)アザラシが、どこからどのようにどれだけの数が回遊しているのかが不明だし、
海域が違う分布においてはニホンジカとエゾシカのような亜種関係も考えられ、耐寒能力が違うかも知れず全く答えは出ない‥。

 

 

三つ目はサケやマスに代表される回遊魚(エサ)の動きに合わせたものではないか?という意見で、これは僕が考えたものではなく知り合いに求めて得た知見。
確かに、11月頃に増えてくるアザラシの説明にはなる。
ただ、より北の海域のほうが(外国のほうが)漁獲量って多いんじゃないか?という先入観を僕は持っていて‥。

好奇心旺盛!

ここまで書いてうーむと頭を抱えてしまった。

ふと子供の頃、親父に言った自分の言葉を思い出した。
「どうして仕事に毎日行くの?、二日分の仕事を一日でこなして一日おきに会社へ行けば良いじゃない?」

氷原のへりでの休息、彼らは夜を待っている。

親父は何も答えなかった。

親父は何と思っただろうか?、見込みのあるやつだと思っただろうか、それともなんてグウタラでズボラな真剣味の無いやつだ、と呆れただろうか?。

周囲への警戒は怠らない。 

色々に有り過ぎる理由で、朝から数々のイベントをこなし、会社や学校へ向かい帰宅し、翌日を迎え、毎年同じ暦を重ねる人類の習性はアザラシには難解かもしれない。

同時に、もしかしたらアザラシにとっても歯を磨いたり、顔を洗ったり、会社へ行ったり、あっちへ行ったりこっちへ行ったり‥、どうしてそうしているのか判らない‥
ぐらいの数々の意味のある/そして無意味な理由ぐらいは北海道への回遊行動の中に隠されてるのかなー、なんて思うのでした。

家族の肖像。

そんな事を考えながら自分のゴマフ(胡麻班)色の体毛に手をやる。
ヒゲと爪が伸びたなー、切らなくては。
そういえばまわりの気温もちょっと低く寒い‥。

思考を巡らす集中が、切れた自分に気がついた。

先日、北海道新聞の一面に今期の海氷の発達面積が過去最低との見出しが踊った。
海氷が無くなれば、アザラシの繁殖行動に影響を与えるだろう。
その上、海水温の上昇に連動しサケマスの減少が顕著になっている。
漁獲量が大幅に減りつつあるなか、アザラシの漁業者への追い打ちが目立ってしまう。
アザラシ頭数が充分に回復しているなら、過去に行われていたアザラシ猟や利用を単に駆除ではなく食品や毛皮加工など生活を豊にする事業として再起させるのも一つの方法かもしれない。
けれども、今の少なくなった漁獲に対する漁業被害を抑えるためには、根絶するほどの頭数を減らさなければ効果的な抑制にはならないようにも思うが、とはいってもそんな横暴は常識的ではない。
サケマスの減少を食い止め、増加へ転じ、漁業者と海獣が今後も同じ生活を続ける事が可能か?
将来的に、より最小へと奪い合いを続けるか?それとも譲歩か?。
取るべき手だては幾つもないが、状況を生んだのは彼らではない。

著者プロフィール

八木直哉(やぎ・なおや)

1975年北海道生まれ。
写真家。動物、魚類、鳥類、両生類、昆虫、などを撮影している。
北海道の本来の野生と人の関わりの痕跡が現在のテーマ。
愛用の機材はNikon F5 F100 FM2 D300

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