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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.70 知床の春。

2017.4.5

 最近、撮影ガイド中にお客様と話をしていて、気付かされることがあった。

固まっていた流氷帯が散りぢりに、オホーツクの外へ流れてゆく。

どうやら、北海道外の方は「北国の冬は長い」と考えているらしい。

日当たりの良い場所を選んで過ごしていたクマ。
眠気に襲われているようで、おおあくび。

その上、環境が厳しく人が行く所ではない‥ともお思いの方がいて、まるで地球上の難所のような想像まで抱いているようだ。

背中のあたりが痩せこけているエゾシカ。
ヒグマの存在を注視し、緊張感が走る。 
まだ冬を乗り越えた、とはいえず、5月中旬くらいまで鹿の消耗や餓死は続く。

北極やシベリアに住みたい希望を抱いている僕は、お話を伺いながら密かに困惑していた。

 

 

僕に言わせれば、北海道の冬なんて正味 1ヶ月だ。
11月くらいから雪は降るけれどもキーンと冷える雰囲気に乏しいし、2月の2週目ともなれば、寒気は抜けつつあり、早めのクマが出てくることすらある。

溶けた雪の下から姿を現したトドマツの幼木。
日々、雪がひいてゆく。

前後の季節なんて「冬のおまけ」みたいなものだ。
とはいえ、おまけには魅力がないわけではないし、変化の大きい季節は毎日見応えがある。

陽当たりの良い斜面で授乳するクマ。
多分、2歳児と思われるが、このサイズでの授乳は珍しい。

まぁ、胸の内は「冬が短い!」と文句を言いたいだけなのだが。

きっと子煩悩な母なのだろう。
少しでも、子グマが距離を詰めるとすぐに腹を見せるので、全く移動が進まない。

この短い冬が、今年はさらに短くなった(昨年も多分、同じ事を書いているがもっと短い)。

母グマの幸せそうな表情、子育て上手なお母さん。

気温が上がるのが早いし、3月中の降雪も数日しかなく、みるみる積雪が溶けて引いてゆく。
過去に紹介してきた「おまけ」の季節の現象も、幾つかが見られなくなってきた。

波も無く、よく晴れた夜、半島の入江に星々が踊った。きっと親子のクマも、まどろみながら星を見ているはずだ。

春のなごり雪の雰囲気をずっと味わっていたい僕は、カレンダーに対して不釣り合いに気温の高い日々を、少々フテ気味に過ごしている。

著者プロフィール

八木直哉(やぎ・なおや)

1975年北海道生まれ。
写真家。動物、魚類、鳥類、両生類、昆虫、などを撮影している。
北海道の本来の野生と人の関わりの痕跡が現在のテーマ。
愛用の機材はNikon F5 F100 FM2 D300

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