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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.100 奇跡の星

2019.10.22

 いつの間にか連載が100回を迎えてしまった。
自分の事とはいえ、かなり驚いている。

お母さんが離れて先に行ってしまい、流れに阻まれ焦るエプロンちゃん(首周りが大きく白い為の名)。状況をよく観察し、

岩へ飛び込むも‥

落ちました。

毎日がドタバタか、もしくはぐったりして全く動けないか、振り返る間もなく過ごしているので回数の把握が途中から曖昧になっていた。
もちろん、誰かしらから指摘される事は時々あるので、カウントダウンをある程度知らない訳でもなかったのだが、あまり考えず、見ないようにしていた。
正直に言うと、前後を考えて構成していたのは36回くらいまでだ。
感覚的なものへの挑戦だが、途中からは構える事をやめ、以降はその時に思った事、感じた事、湧き上がって来る事を慎重に、壊さないように取り組んだせいか、今日の100回目は時間がすっと飛んだような感触で、奇跡的にどこかの回と大被りも(多分)しておらず、これはひとまず試みの成功といっていいかもしれない。

 

 

こういった器用(?)な事が自分にできるとは、全く思っていなかった。
何をやっても長続きせず、勘違いをし、何事も角ばっていてぎこちなく。
自分の素養のせいが一番大きいけれども、何かしら仕事をいただいてもいざ取り掛かると制約が多く、ほとんど思った事ができずに短期間で無念の敗退‥なんてザラにあった。
この連載では好きなようにさせてもらっているし、僕を相当に成長させてくれたと思っていて、それもこれも編集の田井さんと碧山さんのご理解のおかげで。
本当に、いつもありがとうございます。

エプロンちゃんは首周りだけではなく、背中も白っぽい。
最初に遠目で見た時はなんて汚いクマなんだ‥と枯葉か何かにまみれているように見え。

冷気の触れる、風の通り道だけが赤く染まるツタウルシ。

水面に映る自分を眺めるシマエナガ。

こうやって、アタフタとこなしてはいるけれども。
僕という一人の人間がやっていることなので、本質的にはいつも同じ事の表現でもあり、だからこその手詰まる恐れもあり。
しかし、動物であったり人であったり、数多くの出会いと出来事がいつも観念から僕を解き放してくれていて、これは普通ではない、異常で稀有な事だと思う。
追っていても、追っていなくても、いつも動物が、僕の前にふと現れてくれる。
見るはずのないもの、あるはずのない事が結構な頻度で起こり、先日は乗っているカヤックに鹿が泳いで乗り込もうとしてきた。
今後の事を考え、今回の原稿をどうしようか‥と思いあぐねた早朝に車を運転していると不意に黒いキツネが現れ、私を撮りなさい、と誘われているように思え。
感じた通りの啓示か、はたまた大きな失敗への扉か?

エゾライチョウがヤマブドウを食べ、

大きなシマフクロウが森に佇む。

読者の方を困惑させたくないし、ストックも少なくなってきているので、丁度の区切りで連載を辞める(写真家を、ではないよ。)事を考えていたけれど。
もう終わりましょう、と田井さんと碧山さんに諭されない限りは続けてみよう‥と、とりあえず今は考えています。
100ヒトケタかフタケタか、いつまで続くかわかりませんが今後は行き倒れ方式で取り組んでいく‥のは、また新たに機材と諸々の技術、スケジューリング、思考‥等々のアップデート、個人的な挑戦の始まりです。(しかし、数回で終わった場合もどうか許してください‥)
読者の方々には根気よく、お付き合いをいただければと思います。

黒いキツネが金色の眼でネズミを睥睨し

満月の光が地表を包み、水の中をも静かに照らす。

それにしても。

この惑星の美しさはどうだろう?
僕と一緒に遊びに行った方々は判っていると思うけど、今日までそこそこ連載をこなしていても、実際に見ているものの半分も読者の皆さんに提供はできていないのです。
写真家である以前にこの星の美しさに魅せられて、つい楽しみ過ぎてしまう‥せいでシャッターを押せていないのがその理由。
ひとまずここで読者の方はもちろん、関わってきた全ての方と、美しいこの惑星と、魅力的ないきものの全てに心からのお礼を。

著者プロフィール

八木直哉(やぎ・なおや)

1975年北海道生まれ。
写真家。動物、魚類、鳥類、両生類、昆虫、などを撮影している。
北海道の本来の野生と人の関わりの痕跡が現在のテーマ。
愛用の機材はNikon F5 F100 FM2 D300

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