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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.89 2018/11/秋

2018.11.17

 気温の下がらない晩秋が続いている。
通常、この時期だとすぐに溶けてしまうけれども雪が散発的に降り、ストーブは1日中つけっ放しになる。
しかし、今年はストーブの温度設定は最低で問題ないし、そもそも一枚多く服を着れば点火自体が必要ない。

暖かい、とは言っても道東地域はそれなりに気温は下がり、水界は澄んでくる。

先日、新たに家を購入した友人宅へ呑み食いをしに行った。 「ストーブに火をつけたいんだけどさあ」 友人は自分で修繕した初めての重厚な薪ストーブに火を点けたいものの、連日暖かく、出番が無いので鬱憤が溜まっている様子であった。 僕は焚き火が好きなので「焚き火と一緒でしょ?火をつけようよ」と言い、鋳物のストーブの中でよく乾燥した薪にはすぐに火が灯り始めた。 焚き火やストーブが点いていると、ナベやヤカンの加熱や調理が置きっ放しで何気なく出来る。

水面に映る自分を見つめるシマエナガ。

料理に蘊蓄のある友人の手により、洒落ていて見慣れない料理が次々に出てきて、持ち込んだウイスキー(健康を気にし、最近はビールを止めている)もついつい進んでしまうのだった。 
アルミのコップで水割りを呑みながら日々を振り返る。
ちょっと前の記事でも触れたけれど、引越しの前後があったり、ガイド業が結構忙しかったり(これは喜ぶべき事です)でなかなか身動きが取れない日々が続き、ちゃんと撮影に取り組めていない焦りがしばらく付いて回っている。
撮影は陸上も水中もこなす関係から、装備や機材がとにかく多い。
撮影についての予定フローや細々とした機材の整理整頓や管理が全てで「あれがない、これがない」では全く撮影にはならず、きちんと機材や装備について管理出来ていなければ行く意味がない。

サケ・マス釣り人が集中し過ぎた結果、密漁の横行や地域の治安が低下し、釣りが禁止になった場所がある。
あまりに人が集中し過ぎて気付かなかったのかもしれないが、がらんとした景色の中に魚神を呼ぶアイヌの祭壇を見つけた。
細々と、普遍的に風習が継承されている。嬉しい発見。

せっかく撮った写真にホコリでもついていようものなら台無しだし、機材をぞんざいに扱ってもし水没や内部への水滴の侵入など、破損を招けば大損で、回復にまた時間がかかる。
最終的にきちんとした作品を取る必要があり、端的に言えば集中力が要求される。
しかし、諸々のルーティンがある時期から乱れてしまっていて、なかなか収束しなかった。
お客様をお連れするガイド業は、安全や成果を高水準で担保しなくてはいけないので、ガイド業に関連する装備の片付けや維持が優先され、次にガイドの下見(撮影は日の出以前から出発し、戻りも遅く、場合によっては夜も続行する。下見は朝だけだったり、7時以降の行動が主になり、簡易なもの。)に時間をかける‥のはまとまった撮影時間を得られないのでわざわざ下見に時間をかけているわけだ。

漁業用と思われる放棄されたバスケットに興味をそそられるクマ。

入ってみようと試みるものの‥

どうしても入ってみたい‥

無理でした。

有難い事にガイドの仕事はさほど自分がフォーカスしていない、うっかりしていた部分の調査ができ、視野が狭くなりがちな個人業の戒めにはなるし、簡易な撮影もできる。
基本的にガイド中にはあまりシャッターを押さないが、それなりに結果が得られるのは、やはり知床や道東の豊かな自然ならではだろうと思う。
知床の自然が僕に写真を撮らせてくれ、訪れるお客様は視野を広げてくれている。

知床五湖は澄み渡り、

そんな事を思いながら、何杯目かの水割りを作った頃、ふと沖縄かどこかの南の地域の話になった。
友人夫婦は毎年オフにはどこかへ出かけている。(僕はガイドがメインではないので、明確なオフはなく、仕事のパターンがちょっと違う)

ライチョウはヤマブドウをついばみ、

「今年は行かないの?」「行かない」
「何か理由があるのかい?」「家を買ったし、何かと落ち着かないので、そういう気になれなった」
「ふーん、そういうもの?」「そういうものでしょ」
作ってくれた、ナスビのキムチの浅漬けをつまみ、水割りを流し込む。
何でもないやり取りではあったが、価値のある良いやり取りだったと思う。

エゾリスはキノコを食み、のんのんとゆるい秋が過ぎてゆく。

今年の天候や季節の推移はメリハリが無くのっぺりとしている。
そういう時は動物たちものっぺりと過ごしているものだ。
この原稿を書き終えたら、残り少ない温かな今年の自然をゆるゆると、目一杯楽しもうと思う。 

著者プロフィール

八木直哉(やぎ・なおや)

1975年北海道生まれ。
写真家。動物、魚類、鳥類、両生類、昆虫、などを撮影している。
北海道の本来の野生と人の関わりの痕跡が現在のテーマ。
愛用の機材はNikon F5 F100 FM2 D300

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