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Vol.21 エゾタヌキ

2013.3.6

幼少の頃、近所のヤクザ屋さんが色々な動物を飼っていた。
犬は複数、時にはクマの子、ブタ、鳥類もいたかな?。
かなりのいきもの好きで、川に刺し網などもよく張っては沢山の魚なども獲っていた(もちろん違法)。

タヌキの生息環境。前面は流氷、周囲は崖に囲まれる。

ある日、庭のオリを覗き込むと複数のタヌキがいた。
それがエゾタヌキとの初めての出会いだった。
それまで、家の周囲とか僕の行動範囲の周辺でタヌキなど見た事が無かった。

手前の集まりは鹿の遺骸を食べている、後方はじゃれあう2頭。
周囲の雪面にはシカの毛が散っている。

どこで獲ったの?と聞くと家の裏だという。
家の裏に残飯やドックフードを撒き、トラバサミ(踏むとバチンと跳ね上がり、足を噛み込む古典的なワナ)を仕掛けたのそうだ。

巣穴のひとつ、けもの臭さが漂う。

僕は感激していた。
中型の、どちらかといえば大きないきものがこっそりと人間世界の近くで息づいているなんて!。
当時の僕の知見では、北海道にタヌキが棲息していることすら知らなかった。
そしてヤクザ屋さん達のいきものに対する好奇心と、捕獲する知識にも果てしなく感激していた。

岩棚を上り下りして遊ぶ、足は短いが意外に登坂能力は高い。

祖父母がヤマメの養殖を営んでいた。
そこの養殖池によくタヌキが落ちて死んでいる、といった話を聞いた。
見間違いか記憶違いかもしれないが、一枚のタヌキの毛皮が記憶の片隅に残っている。
落ちて死んだものをなめしたものではなかったか?そんな会話を誰ともなくしていたように思う。
あいまいな記憶。
いずれにしても、明確な生息痕跡や姿を見掛ける事は無かった。

岩陰にも巣穴があるようだ。

それから月日が経ち、僕の身体も大きくなり、渓流釣りへでかけるようになると姿を見掛けることが多くなってきた。
朝もやの立ちこめる濡れた林道を静かに歩いていると、黒く大きなタヌキによく出会う。
あまり目が良くないらしく、至近距離になって初めてはっとした様な顔をし、コロコロと走って逃げる。
こういった場所では林道の真ん中にタヌキの糞が積み重ねられている事が多かった。
といっても、(多分タヌキの糞だろう)ぐらいの感触で実際に排泄しているのを見たわけではない。
目撃する事は多くなったものの、まともに生活を見せてくれる事は無く偶発の遭遇が多かった。

 

 

先日、海岸でエゾシカの落下死体を探していたら茶色いものがうごめいていた。
望遠鏡越しに目を凝らすとタヌキだ。
岩棚の上で重なり合い、ひなたぼっこをしている。
今の時期、どのいきものにとっても太陽の光は身体を温める大事な熱源だ
これで、曇りや降雪の日に出掛けると全く姿を見ない。

一頭がこちらの気配を感じ取り、偵察にやってきた。
本州のタヌキの愛くるしさとは違い、厳しい環境に息づく凛々しい眼をしている。

翌日、望遠鏡で遠見した場所へ赴くとそこはタヌキの楽園だった。
時々シカが落ちてきてエサには困らないし、前面は流氷原、周囲は崖に囲まれている。
外敵が入り込みずらい地形なのだろう。
警戒心のない生活の一端を見せてくれた。
真摯に野生のいきものを追い続けていると、時々今回の奇跡のような場面に出くわす事がある。

著者プロフィール

八木直哉(やぎ・なおや)

1975年北海道生まれ。
写真家。動物、魚類、鳥類、両生類、昆虫、などを撮影している。
北海道の本来の野生と人の関わりの痕跡が現在のテーマ。
愛用の機材はNikon F5 F100 FM2 D300

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