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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.27 宴のあと

2013.9.8

 八月の終わり、宴の後へ赴いた。
噂を聞いたのは連日続く猛暑のさなかで、忙しかった僕は、なかなか撮影に出掛ける事ができなかった。
海岸にクジラがうちあがり、20頭程のクマが連日パーティを繰り広げているという。

腐敗しきって骨から外れたクジラの肉に、一頭のヒグマが付いていた。

どこから、そんな沢山のクマが湧いてくるのか?

 

 

知床に棲むヒグマの総数は諸説ある。
よく言われるのは、200~250頭という数字。
しかし、この数字の出どころと思われる資料によくよく目を通すと、(雌の数が200‥)と弱気にひっそりと書いてある。
どんな資料なんだかと苦笑してしまうが、それだけ野生動物の行動を掴むのは難しい。

巨大な骨の上を小さなクマが歩いている。

僕の住むウトロは人口が1200人だ。
一番見かける動物は間違いなくエゾシカで、その次がキツネ、その次がヒグマ、その次が人間の大人で、
その次が人間の子供、そしてシマフクロウ、タヌキ、テン‥と続く。

 

 

人口の1200人には及ばないにしても、目撃件数から、知床のヒグマは600頭から多くて800頭はいる可能性はある。
もちろん、半分冗談の推定値だが、結構いい線をいっているのではないかと思う。

周囲に漂う腐臭が胸を突く。
人間世界で毎年起こる、夏の食中毒って何なのだろう。

 保護団体のシーシェパードさんが卒倒しそうな方法だが、正確な生息数を調べる為にクジラを海岸沿いに点々と置く、というのはどうだろう?
大きな動物が死に、日にちが経つと大変臭い。
知床は狭い土地だ。
山の上から森の奥の隅々まで風が匂いを運び、沢山のヒグマがわらわらと集まって来るに違いない。

気配を感じ、丘の上に目をやるともう一頭のクマがこちらを見つめていた。

こういったクマのパーティーにはドレスコードがひとつある。
小競り合いに勝る立派な体格であること、だ。
腐肉と残滓を求め、パーティ本番に参加できなかった体格の小さなクマが宴のあとに訪れていた。
僕もまた、参加することができず、忙しかった日々を悔いた。

シャバシャバに朽ちた肉を掬って食べる。
「うまいよ、これ」と言ったかどうか。

著者プロフィール

八木直哉(やぎ・なおや)

1975年北海道生まれ。
写真家。動物、魚類、鳥類、両生類、昆虫、などを撮影している。
北海道の本来の野生と人の関わりの痕跡が現在のテーマ。
愛用の機材はNikon F5 F100 FM2 D300

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