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どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.6 カワガラス

2011.12.5

雪が降り、消え、くり返す。

1-1

陽気に静寂を飛び回る。

地表には霜柱が立ち、沢の流れの中でさえ氷点近くに下がり、冬の気配は存在を強め、日増しに厳しい寒さを伴ってくる。

浅瀬の薄氷に雪が降って来た。

12月の中頃、川の流れの穏やかな場所ではうっすらと結氷し始め、飛沫が飛ぶような滝や、大小の石のわずかな高さから落下する流れは、その降下の途中で冷気を巻き込み、水底でゆるく凍る。 次々、次々と凍り、着底せずに流れたものは、流れのトロい場所へ流れ着き、吹きだまる。

卵を守るサケによく襲われる。好奇心は強いが、度胸もある。

そして、下流域の岸から、徐々に上流側へ積み重なって、水面で固い氷に変わってゆく。

冷気を巻き込んだ水流が、水底でみぞれ状に凍りつく。

 

刻々と、静かに変化を遂げる川で、よく出会ういきものがいる。
一年を通じて、にぎやかに客を迎えてくれるが、白い雪の中では特に目立つ道化師のカワガラスだ。
色が黒っぽいだけでカラスとは無関係な鳥だが、好奇心の強さは本物に負けない。

羽毛の中にたくさんの空気を蓄え、強烈にはじくので水に濡れることはない。

ヘリコプターの様に僕のまわりをかすめて上流から下流へ、またその逆へ、ひっきりなしに飛び回る。
クマやエゾシカといった訪問者に対しても同じように、パートナーだとか、兄弟姉妹をわざわざ呼んで、ピチッ、ピチッと鳴き、つきまとう。

息絶えたサケにも氷が付く。

ユニークなのは性格だけではない。
カワガラスの足のウラは柔らかなヒダが重なっている。
これで体を固定して、自分よりも大きい石をひっくり返したり、忍者のように水流に負ける事なく潜り、川底を歩き回る事が出来る。 そうやって冬の前半はサケマスの産んだイクラを、後半は隠れている孵化した稚魚を食べて生活している。 厳しい冬でも、食べる事に不自由はしないようだ。

いくつかのサケが、まだ氷面下に泳いでいた。

一般的な水鳥は、という前置きなのだが、足は常に外気温と同じくらいで、冷たいとは感じないらしい。
高い体温を羽毛で覆って保温し、暖かい血液を、冷えやすい足に多く流し込み、温度を下げ、体温を40°~42°に維持しているんだとか。

間もなく水域が氷に閉ざされる。

僕自身は子供の頃、川を渡るために、大人になってからは興味本位で、冬の川に素足を突っ込んでみたことが何度かあるが、もだえ苦しみ、数秒で降参した。 「身を切るような冷たさ」という例えがあるが、「足を破壊するような」との表現の方が適当だった。

長い冬のはじまりだ。

著者プロフィール

八木直哉(やぎ・なおや)

1975年北海道生まれ。
写真家。動物、魚類、鳥類、両生類、昆虫、などを撮影している。
北海道の本来の野生と人の関わりの痕跡が現在のテーマ。
愛用の機材はNikon F5 F100 FM2 D300

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