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Vol.13 オジロワシ

2012.7.4

知床では車で寝泊まりした日々が2年弱、その後定住し4年になる。

6年程の付き合いになる訳だがその間、作品の野生度が上がり、自分から遠くなってしまったように感じた事がある。

連日続く小雨と霧が森を育て、オジロワシの巣を柔らかな緑が包む。

それより以前の作品は、自分の原点だった身近ないきものを撮っていたので変わっていく内容にかなり困惑した。

それだけ知床に残されている生き物の暮らしと密度が、希有なものだとの証明でもあるのだが。

しかし、当たり前だがこの地に住み時間が経ってくると色々な事が皮膚感覚と合致してくる。

空は明るくなったが雨は続く。
兄弟(姉妹?)の自立心の高い方のヒナは孤高に雨に濡れ、甘ったれのヒナは子煩悩の母親の下に抱かれている。(6/10日)

山に入る時は幾つかの道具を身につけている。

木に登る為の爪、ロープだとかナタ、熊撃退スプレー、偽装網、デカいレンズに2~3の小レンズ、重い三脚、双眼鏡、携行食。

成長の速度にも違いが出ているようだ、右のヒナは幼い感じ。

こうやって並べてみると、驚いた事に日常では価値のないものばかりだ。

しかも、撮影に出ても無駄足になってしまう事が多い。

「どうしたことだ?羽を動かしたくて仕方が無い」と言ったかどうか。
そんな兄(姉)をどうしたの?と見つめる下の子。

一生懸命木に登って大きなレンズをロープで引き上げ、被写体を待ち構えてもなーんにも動物が来なかったり、崖を死ぬ様な思いで毎回登って

いたら裏手の方に車で行ける林道があったり…。

将来必要になるムダの典型例、バタバタバタバタ頑張って羽ばたく。

何をしているんだろう?、と涙がこぼれる事も少なくない。

しかし、だ。

(6/14日)

将来的には無駄足なんてない。

自分の世界の事柄は全て自身のルーツになる。

技術面や視点、発見はいつも辛く虚しいムダの最中に湧き出てきた。

白いうぶ毛が無くなって精悍さが出て来た(6/27日)。

一番嬉しいのは、知床での皮膚感覚を得た事。

近所へちょっとくり出せば、四季折々いろんな動物に会える。

羽を動かしたい衝動が強くなる。

さて、今日もオジロの家族に会いに行こう。

あと数日もない家族の肖像。

著者プロフィール

八木直哉(やぎ・なおや)

1975年北海道生まれ。
写真家。動物、魚類、鳥類、両生類、昆虫、などを撮影している。
北海道の本来の野生と人の関わりの痕跡が現在のテーマ。
愛用の機材はNikon F5 F100 FM2 D300

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