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Vol.68 下関とふく

2019.1.20

 早いものでもう1月も下旬となりました。皆さんは初詣に行きましたか?私はほぼ毎年、海響館近くにある亀山八幡宮に初詣に行きます。この亀山八幡宮では、下関に所縁のある神社ならではの催しとして、初詣には参拝者へ無料で「ふぐ雑炊」がふるまわれます。神社で海響館のフグたちの無病息災をお祈りし、ふぐ雑炊を食べてほっと一息つくと、ようやく「年が明けたんだなぁ」という実感がむくむくと湧いてきます。

亀山八幡宮(左上の矢印は世界一大きいふぐの銅像)

 さて、今年最初の投稿で何を話そうかと考えたとき、ふとこのブログタイトル「続・海響館美人ふく通信」が目に入りました。「美人」の部分は非常に繊細な問題なので割愛させていただきますが、「ふく」という言葉を疑問に思った方がいるのではないでしょうか?これは、「フグ」だと「不遇(ふぐう)」に通じて縁起が悪く、「フク」だと「福」に通じて縁起が良いため、下関では昔からあえて「ふく」と呼んでいるという経緯があります。また、「フグ」の語源は諸説ありますが、体が「フクらむ」様子から、膨らんだ姿がひょうたん(「フクベ」ともいう)に似ているからというように、もともとは「フク」で、音が濁って「フグ」と呼ばれるようになったことも関係しているようです。
 このように、下関では呼び方一つとっても特別扱いされているフグが、なぜこんなにも愛されているのかというと、そこには歴史的な背景があります。フグはなんと縄文時代から食べられていた記録があるそうですが、昔は今のようにフグ毒の研究がされているわけでもなく、フグ毒による死者も今よりも多かったといいます。そんな中で、安土桃山時代の豊臣秀吉は、兵士がフグを食べて中毒になったことから、「河豚(フグ)食禁止の令」を発令しました。その後、明治21年(1888年)に初代総理大臣の伊藤博文が下関の割烹料亭「春帆楼」で食べたフグの味に感嘆し、山口県知事に働きかけたことで、山口県にて日本で初めてフグ食が解禁されました(禁食令は表向きだけで山口県の庶民の間では普通に食されており、同県出身の伊藤公も実は何度も食べていたが初めて食べたふりをしたという裏話もあります)。そして、フグ食解禁に伴い、全国に先駆けてフグの流通・加工処理技術の発展に努めたことで、全国から水揚げされたフグが集まるようになり、下関は日本一のフグの集積地として確固たる地位を築きます。
 下関の発展はフグ無しにはありえなかったという思いから、下関では今もなおフグが愛されているんですね。また、フグに対する感謝の気持ちを忘れないように、あえて「ふく」という呼び方にこだわっているのではないかと私は思います。

フグのマンホールなど、下関の街のいたる所にフグのマークがあります。

 最後に宣伝になりますが、今年の2月9日「ふく」の日に合わせて、海響館3階トラフグ水槽付近で展示している「ズームアップ フグのふしぎ」のテーマが「フグの行動」から、新テーマ「フグの毒」に変わります。フグの毒とは何かから始まり、最新のフグ毒研究の話など盛りだくさんな内容になっています!次回の「ふく通信」ではこの新展示についての紹介をする予定なので、フグ毒に興味津々という方はお楽しみに!

著者プロフィール

笠井未来 (かさい・みく)

1991年東京生まれ。2015年から下関市立しものせき水族館「海響館」の魚類担当として働き始める。都会育ちにもかかわらず、趣味はスノーケリングで、特技は生物採集!大学では魚の繁殖生態の研究で毎日海へ潜り、魚の恋愛模様を覗き見る生活を送る。フグやカエルなど、ぽっちゃりとした生き物をこよなく愛する。

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