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Vol.74 モリドラゴン

2016.7.25

 モリドラゴンは、オスの場合、後頭部から背面の正中線に連続した「たてがみ」を付け、喉元に大きく垂れ下がった皮膚を持つトカゲのグループです。がっしりした体つきで、小さな恐竜といった表現がピッタリのトカゲです。ブルーアイモリドラゴンのように虹彩が青い種も数種類あり、ペットとしても人気があるトカゲです。

 爬虫類の中でも、トカゲ類とヘビ類を合わせて有鱗目と呼びます。大変に栄えたグループで7000種以上あり、現生爬虫類の95パーセント以上を占めています。種数は1目だけで哺乳類全体より多い計算になります。このうちヘビ類を除くトカゲ類(トカゲ亜目)だけでも4000種以上が知られています。極地と高地を除く世界に広く分布し、とりわけ熱帯地方には昼行性のアガマ科、オオトカゲ科、トカゲ科、夜行性のヤモリ科、トカゲモドキ科など、多くの科に分類される多様なトカゲ類が分布しています。

 日本にはアガマ科(オキナワキノボリトカゲ)、トカゲモドキ科(クロイワトカゲモドキ)、ヤモリ科(ニホンヤモリ、タシロヤモリ、ホオグロヤモリ)、カナヘビ科(ニホンカナヘビ、サキシマカナヘビ)、トカゲ科(ニホントカゲ、キシノウエトカゲ、アオスジトカゲ)、イグアナ科(グリーンアノール・外来種)など外来種を含めて約41種、特に琉球列島に多くの種類が分布しています。

ボルネオモリドラゴン。丘陵地帯の深い森に棲む。

ボルネオモリドラゴン。丘陵地帯の深い森に棲む。

 モリドラゴンとはアガマ科モリドラゴン属のトカゲ類の総称です。フィリピン、タイ、マレーシア、インドネシアなど南アジアに分布、約16種が知られています。太い木があるうっそうとした森林にのみ棲息し専ら樹上生活をするトカゲで、ふつう、地上におりることはありません。枝から枝へ移動し、枝が途切れた所では、下方にジャンプして別の枝に移ります。捕食は「待ち伏せ型」で、頭を上にして太い幹に張り付くようにして静止し、ひたすら獲物が来るのを待っています。食べ物はアリを含む小昆虫や小形のクモ類です。

 昼行性で、夜は潅木の地上1から2メートルの低い所にある細い枝や、枝と枝を結ぶようにして絡まっている細い蔓の上で、腹ばいになって眠ります。ふつう、目は開けたままで寝ています。枝や蔓は、ちょっとした風が吹いただけでも揺れるのですが、そんな不安定な場所が彼らにとって一番安全な寝場所のようです。モリドラゴンは、夜行性の肉食動物にとって手頃な大きさの獲物なのでしょう。ヤマネコやジャコウネコ、フクロウの類、トカゲ類を食べるヘビなど、森林にはたくさんの天敵が潜んでいます。そんな動物が近づいても、ちょっとした力が加わるだけで、細い枝や蔓は大きくゆれます。それによって、モリドラゴンはいち早く外敵の襲来を感知するのです。

夜は細枝や蔓にまたがるようにして眠る。

夜は細枝や蔓にまたがるようにして眠る。

 ボルネオ島には5種のモリドラゴンが分布し、そのうち2種がボルネオ固有種です。もっともよく見られるのがボルネオモリドラゴンです。本種はボルネオ固有種でもあります。がっしりした体型、頭のすぐ後から背面の稜の部分を、尾の付け根まで棘状の鱗が連なっています。特にオスでは棘が長く発達し、喉元には咽喉垂という垂れた皮膚が発達しています。頭から尾の先端までの全長は最大で50センチに達します。通常の色は背面が鮮やかな緑色で、5本の暗褐色の帯模様があります。側面には体色より明るい楕円形の斑紋が密に分布しています。棘状の鱗は褐色。ただし、林内で遭遇する時は、写真のように全体が褐色のことが多いように思います。モリドラゴンは静止している場所によって体色を緑色から褐色の間で変化させることが出来るのです。そんなことから、地元の人やガイドによっては「カメレオンだ」と教えてくれますが、本当のカメレオンはアフリカやユーラシア大陸南西部に分布し、ボルネオ島には棲息していません。

 モリドラゴンは決して珍しい生き物ではないし、数が少ないわけでもありません。しかし、日中でも薄暗い森の中に棲み、明るく開けた場所には出てきません。それなので、ぜひ会ってみたいからと懸命になって探してみても、なかなか思うようにならないトカゲです。ほとんど偶然に見つけるといった感じです。はっきりした縄張りを持っており、1度探し当てると、次回行った時にも、その辺りを探すと、同じ個体を見つけることができます。直径およそ10メートルの面積を縄張りとしているように感じます。さらに、3年くらいは同じ個体に会うことがあります。最初の時、すでにオトナでしたから、おそらく寿命は5年くらいあるのでしょう。

コグシカロテス。明るい二次林や公園などに棲む。

コグシカロテス。明るい二次林や公園などに棲む。

 モリドラゴンは、太陽がよく差し込むような明るい二次林には棲んでいません。そんな所では、同じアガマ科でもコグシカロテスという別のトカゲが棲息しています。コグシカロテスは一見、日本のキノボリトカゲに似た姿をしています。後頭部には、モリドラゴンにあるような、たてがみに似た棘状の鱗が少しあります。しかし、背面や尾にはありません。全体に薄い空色を帯びた鮮やかな緑色のトカゲで、長い四肢と尾を持ち、全長30センチくらいまで成長します。

 専ら樹上性で、潅木が多い明るい森、町中の公園、農村地帯の庭木などで生活をしています。ちょうど、奄美大島や沖縄諸島でキノボリトカゲを見る感覚で、普段の生活の中で見ることが出来るトカゲです。キノボリトカゲが分布していない北海道、本州、四国、九州では、これは専ら地上で生活するトカゲですが、ニホンカナヘビのように頻繁に見かける種類だと思ってください。アリやハエ、小さな甲虫類など小昆虫がおもな食べ物です。

和名   ボルネオモリドラゴン
学名   Gonocephalus bornensis
英名   Bornean Angle-head Lizard

和名   コグシカロテス
学名   Bronchocela cristatella
英名   Crested Green Lizard

著者プロフィール

安間 繁樹(やすま・しげき)

東京大学大学院博士課程修了。農学博士(哺乳動物生態学専攻)。
世界自然保護連合種保存委員会(IUCN・SSC)ネコ専門家グループ委員。熱帯野鼠対策委員会常任委員。公益財団法人平岡環境科学研究所評議員。2004年 市川市民文化ユネスコ賞受賞。
若い頃から琉球列島に関心を持ち、とくにイリオモテヤマネコの生態研究を最初に手がけ、成果をあげた。1985年からは、おもに国際協力機構(JICA)海外派遣専門家として、ボルネオ島で調査および研究指導に携わってきた。西表島とボルネオ島に関し、あるがままの自然と人々の営みを記録すべく歩き続けている。
著書 西表島および琉球列島関係
『ネイチャーツアー西表島』(東海大学出版会)、『西表島自然誌』(晶文社)、『石垣島自然誌』(晶文社)など
ボルネオ島関係
『キナバル山 ボルネオに生きる自然と人と』(東海大学出版会)、『ボルネオ島最奥地をゆく』(晶文社)、『ボルネオ島アニマル・ウォッチングガイド』(文一総合出版)など多数

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