日本全国の動物園と水族館をつなぐ情報誌、「どうぶつのくに」「どうぶつえんとすいぞくかん」公式Webサイト

どうぶつのくに どうぶつえんとすいぞくかん

Vol.75 チャガシラガビチョウ

2016.8.25

 ガビチョウの仲間はチメドリ科の鳥です。チメドリの仲間はスズメやメジロくらいの小鳥がほとんどですが、ガビチョウの仲間は全長22から25センチ、日本のムクドリよりひとまわり大きな鳥です。体型もムクドリに似ています。

 2000年、世界自然遺産に指定されたキナバル山。公園入口は標高1,600メートルにあります。また、同じ公園内にあるメシラウリゾートは標高2,000メートルに位置しています。数少ないラジャウツボカズラ(王様ウツボカズラの意味)の自生地として知られた所です。ラジャウツボカズラはキナバル山の固有種で、ウツボカズラの中で最大の壺を持つ種類です。このメシラウリゾートは、2015年6月に起こった大きな地震で壊滅的な打撃を受けました。キナバル山塊が一望出来る場所から見ると、震災の被害が無かった所は、花崗岩の斜面が今なお黒々としています。ところが、崩壊が起こった所は白い崖に変わっています。特にメシラウ谷は全面真っ白になってしまいました。現在、メシラウリゾートは閉鎖されており、復旧のメドもたっていません。

チャガシラガビチョウ。赤茶色の頭が特徴。

チャガシラガビチョウ。赤茶色の頭が特徴。

 キナバル公園を訪ねると、特に午前中は実に多くの鳥を見ることが出来ます。ネイチャーツアーとして世界各地から多くの人が訪れるダヌムバレーやキナバタンガン川、そしてタビン。それぞれの場所で、たくさんの鳥との出会いがあります。しかし、キナバル山では鳥類相ががらりと入れ替わり、すべて山地性の種類となります。道路脇や林内で見ることが出来る、そういった鳥のほとんどはヒタキやメジロ、タイヨウチョウなど小さな鳥です。そんな中で特別に大きく、目立つ色合いをした鳥がいたら、それはチャガシラガビチョウかチャバネガビチョウでしょう。胸から腹面は灰色で、頭、あるいは翼が赤茶色です。

 ガビチョウの仲間は、もともと日本には分布していませんでした。ところが、今はガビチョウが関東、中部、九州北部などで留鳥として棲息します。東京都内の高尾山では普通に観察される鳥の1つになっています。日本では人家に近い雑木林が主な棲息場所で、巣作りもそのような所で行ないます。また、ブッシュが広がる河川敷などで見ることもあります。ふだんは小群で行動していますが、繁殖期にはつがいか単独で行動します。昆虫や果実が主な食べ物で、ほとんど地上で採餌します。ガビチョウの自然分布は中国南部から東南アジア北部にかけての広い地域です。日本のものは、ペットとして輸入された個体が逃げ出して定着した外来種です。日本以外ではハワイ諸島にも侵入しています。全長22から25センチ、長い尾とクチバシを持っています。クチバシは黄色。全体は茶褐色でかなり地味な鳥ですが、眼の周りとその後方に眉状に伸びた白い紋様があります。この特徴的な模様から中国では「画眉(Hwamei)」と呼び、和名は漢字表記を日本読みにしているわけです。かなり大きな音色で美しくさえずるようですが、私は聞いたことがないのです。ぜひ、1度は聞いてみたいものです。

チャガシラガビチョウ。樹上でも地上でも採餌。

チャガシラガビチョウ。樹上でも地上でも採餌。

 ボルネオチャガシラガビチョウはボルネオ固有種で、キナバル山からクロッカー山脈、島の中央山岳地帯を南下してカリマンタンにまで分布しています。山地林では最も目に付く鳥の1つで、連続して山地が続く地域では多少とも標高の低い谷あいでも観察されることがあります。標高2,500メートル以下の低部山地林が棲息の中心ですが、上部山地林にも棲息しています。キナバル公園では、小さな群れでレストランやロッジのある芝地に降り、ちょうど日本のムクドリのように昆虫類を捕食しています。また、植栽した潅木の実やバライチゴ、ノボタンの果実を食べています。全長25センチ、雌雄同色で、写真で分かるように、胸、腹、翼から尾は灰色、頭全体から頬、顎にかけての赤茶色の部分が大きな特徴です。目は黄色で縁取られています。クチバシも黄色。また、翼の外側に一部白帯が入っています。

 チャバネガビチョウも山地性の鳥ですが、ボルネオだけでなくスマトラ島の一部にも分布しています。ボルネオにおける分布は前種とほぼ同じです。全種よりやや大きく雌雄同色、頭部は胸や腹と同色で濃い灰色ですが、翼や尾は濃い赤茶色です。また、目の周囲は薄いブルーです。クチバシはほとんど黒に近い灰色です。しばしば、キョ・キョ・キョ・キャラララララ・・・と、けたたましい声で一斉に鳴きます。

チャバネガビチョウ。頭は腹面と同色で濃い灰色。

チャバネガビチョウ。頭は腹面と同色で濃い灰色。

 両種に共通することは、林内の中層部から下層部が活動の中心で、地面に下りることもよくあります。さらに、両種はほとんど常に混群を作って、木から木へ渡り、さらに短い滑空をくり返しながら、せわしなく移動を続けます。1ヵ所に長く留まることがないので、シャッターチャンスが掴みにくい鳥です。そんな鳥の群れがいる所では、ボルネオヤマスンダリス、ボルネオワキスジリスも同時に観察することが出来ます。どちらも樹上性のリスで、2種のガビチョウと同様、小さな果実を食べているからです。地上ではボルネオカオナガリス、ヤマツパイが一緒です。両種とも地上性ですが、主に落下した果実や種子を食べています。

 ボルネオ島にはもう1種、ハゲガビチョウが分布しています。ボルネオ固有種で、キナバル山南部からサラワク北部の限られた地域の山地帯にのみ分布。しかも、かなりしっかりした森林でなければ棲息していません。全体は灰色、翼と背面は黒に近い灰色。クチバシは鮮やかな赤色。頭は黄色ではげています。しかし、幼鳥に限って頭は黒色で羽毛が生えています。

 

和名     ボルネオチャガシラガビチョウ         チャバネガビチョウ
学名     Rhinocichla treacheri             Garrulax palliatus
英名     Chestnut-hooded Laughing-thrush     Sunda Laughing-thrush

著者プロフィール

安間 繁樹(やすま・しげき)

東京大学大学院博士課程修了。農学博士(哺乳動物生態学専攻)。
世界自然保護連合種保存委員会(IUCN・SSC)ネコ専門家グループ委員。熱帯野鼠対策委員会常任委員。公益財団法人平岡環境科学研究所評議員。2004年 市川市民文化ユネスコ賞受賞。
若い頃から琉球列島に関心を持ち、とくにイリオモテヤマネコの生態研究を最初に手がけ、成果をあげた。1985年からは、おもに国際協力機構(JICA)海外派遣専門家として、ボルネオ島で調査および研究指導に携わってきた。西表島とボルネオ島に関し、あるがままの自然と人々の営みを記録すべく歩き続けている。
著書 西表島および琉球列島関係
『ネイチャーツアー西表島』(東海大学出版会)、『西表島自然誌』(晶文社)、『石垣島自然誌』(晶文社)など
ボルネオ島関係
『キナバル山 ボルネオに生きる自然と人と』(東海大学出版会)、『ボルネオ島最奥地をゆく』(晶文社)、『ボルネオ島アニマル・ウォッチングガイド』(文一総合出版)など多数

カテゴリー

カテゴリー一覧

このカテゴリーの他の記事

ページTOPへ

Copyrights © 2010 Doubutu-no-kuni All Rights Reserved.
誌面、Webにおけるあらゆるコンテンツの無断複写・転載を禁じます。