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Vol.83 ボルネオの森と動物たち その2 哺乳動物

2017.4.25

 動物の分類は形態的な特徴や系統を根拠になされてきました。さらに、現在ではDNA解析など遺伝学的な手法が導入されています。新しい方法によって以前の分類が否定されることは少なく、むしろ、補強したり再確認することが多いのですが、それでも、これまで同種として扱われてきた動物が、新たに2種に分けられるようなことは多々あります。

 現在の分類では、ボルネオ島には226種の哺乳動物が棲息しています。カニクイザルのように、どんな地域や植生でも見かけるものや、わずか数頭の記録だけのものまで様々です。さらに、コウモリやネズミ、モモンガ類には未発見のものも多少あるでしょう。日本の2倍の面積がある大きな島ですし、交通の便も悪く、調査そのものが国立公園とか鳥獣保護区など限られた場所でしか行われていないからです。226種にはアジアゾウやスマトラサイ、バンテンなど大型の動物もいますが、多くはヤマネコやジャコウネコ、サルなどの中型動物、リスやネズミ、コウモリなど小型の動物たちです。

 食虫目はトガリネズミやジネズミの仲間で、8種類います。ジムヌラとジャコウネズミ以外の6種は、高山など分布域が限られるか、わずかな採集記録のみのものです。ジムヌラは低地帯に広く分布し村落内でも見かけます。ユーラシア大陸のハリネズミと同じ科に分類され、体重1キログラムに達します。ジャコウネズミは市街地に棲み、ドブネズミと同じような生活をしています。食虫目は名前のとおり昆虫やミミズなどが主な食べ物です。

表 全哺乳類のうちわけ。

 ツパイ目はリスに似た小型の動物です。1種を除けばすべて昼間活動し、昆虫や落下した果実などを食べ、生活面でもリスにそっくりです。しかし、長い吻と38本の歯を持ち、リスとは離れたグループです。分類学的には食虫目と翼手目の中間に位置づけられています。動物の頭骨には眼窩(がんか)という眼球が納まるくぼみがあります。哺乳類では、霊長類とツパイ類に限って、眼窩が完全に眼球を取り巻き1つの穴になっています。この特徴を根拠に、ツパイは最も原始的な霊長類と考えられた時期もあります。

 皮翼目はヒヨケザルのことです。四足と尾が発達した皮膜に包まれ、ムササビのように滑空することができます。夜行性で、特定の植物の若い葉や茎を食べていますが、日中に目撃されることもしばしばあります。ヒヨケザルは東洋区固有の動物で2種に分類され、そのうちマレーヒヨケザルがボルネオに分布しています。

 翼手目(コウモリ)は植物食と昆虫食に2分されますが、ボルネオからは93種が記録されており全哺乳類の41.2パーセントを占めています。温帯や寒帯などでは、一般にネズミ類が最も多いのですが、ここではコウモリが圧倒的に多いのです。これは平均樹高50メートルに達する熱帯雨林の立体構造が、様々な採餌空間とねぐらを提供しているからで、コウモリは熱帯多雨林に最もよく適応した動物群であると言うことでしょう。

カニクイザル ボルネオ全域のさまざまな森に分布

 霊長目は夜行性のスローロリス、メガネザルを含め17種が分布しています。メガネザルは体重200グラムほどと小さく、ネズミのような長い尾を持っています。首が180度回転するので、真うしろを見ることができ、移動の際はカエルのようなジャンプを行います。

 テングザルはボルネオ固有種です。大きく垂れ下がった鼻は、オスの成獣だけが持つ特徴です。マングローブの一部や大きな川の中流から下流域の川岸林に棲息します。

 オランウータンはスマトラ島北部とボルネオ島に分布し、2種に分類されます。ボルネオ島でも東カリマンタンのマハカム川と、南カリマンタンから中央カリマンタンにまたがるバリト川によって区切られた島の南東部は、本来の自然分布域ではありません。現在いる個体群は人によって放逐されたものです。その他の地域では、かつては広く分布していました。しかし、森林の減少と特に高い狩猟圧により、現在は散在的です。

 貧歯目とはセンザンコウのことです。全身を覆っているウロコは、体毛の束が角質化したもので、見かけとは違い、れっきとした哺乳類です。夜行性で、鋭い爪でシロアリの巣をあばき、長い舌でシロアリを捕食します。

ベンガルヤマネコ 東アジア広域に分布

 齧歯目はリス、ネズミ、ヤマアラシの3科、それぞれ34種、25種、3種、合計62種が記録されています。ボルネオ産哺乳類の27.4%を占めています。リス科がネズミ科より多いことは、リス科のうち41パーセントが滑空するムササビ、モモンガであることをふまえ、これもコウモリと同様、熱帯雨林の立体構造に支えられた種の多様性であると言えます。ネズミ科にもキノボリネズミやヤマネマウスなど樹上性のものが多くみうけられます。

 食肉目では、クマ科、スカンク科、イタチ科、ジャコウネコ科、マングース科、ネコ科が分布し、24種を数えます。特にジャコウネコ類が9種おり、さまざまな適応が見られます。例えばキノガーレは水辺に棲み魚を常食とし、カワウソに似た生活をしています。マレージャコウネコとマングースの仲間はもっぱら地上性、その他の種類は樹上でも地上でも活動し、肉食であると同時に、食べ物のかなりの量を果物に頼っています。

 長鼻目ではアジアゾウが、島の北東部に約600頭残存しています。大陸の個体群に比べて体が一回り小さく、ボルネオ固有亜種として扱われます。

 奇蹄目ではスマトラサイが島の北東部のわずかな地域に残存しています。すでに20頭を割ったというのが有力な説です。角が高額で売買されるので、密猟が絶えないのです。

 偶蹄目は8種がいます。スイロクという南アジアに分布するシカや、2種類のホエジカ(キョン)、2種類のマメジカ、ヒゲイノシシ、バンテンが分布します。バンテンは野牛で、オス成獣を中心に10から40頭の群れで、深い森林のおもに川沿いで生活しています。

写真説明 1 表 全哺乳類のうちわけ。 2 カニクイザル ボルネオ全域のさまざまな森に分布 3 ベンガルヤマネコ 東アジア広域に分布

著者プロフィール

安間 繁樹(やすま・しげき)

東京大学大学院博士課程修了。農学博士(哺乳動物生態学専攻)。
世界自然保護連合種保存委員会(IUCN・SSC)ネコ専門家グループ委員。熱帯野鼠対策委員会常任委員。公益財団法人平岡環境科学研究所評議員。2004年 市川市民文化ユネスコ賞受賞。
若い頃から琉球列島に関心を持ち、とくにイリオモテヤマネコの生態研究を最初に手がけ、成果をあげた。1985年からは、おもに国際協力機構(JICA)海外派遣専門家として、ボルネオ島で調査および研究指導に携わってきた。西表島とボルネオ島に関し、あるがままの自然と人々の営みを記録すべく歩き続けている。
著書 西表島および琉球列島関係
『ネイチャーツアー西表島』(東海大学出版会)、『西表島自然誌』(晶文社)、『石垣島自然誌』(晶文社)など
ボルネオ島関係
『キナバル山 ボルネオに生きる自然と人と』(東海大学出版会)、『ボルネオ島最奥地をゆく』(晶文社)、『ボルネオ島アニマル・ウォッチングガイド』(文一総合出版)など多数

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