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Vol.93 ボルネオの両生類

2018.2.25

 両生類とは脊椎動物の中で、魚類と爬虫類との間に位置するグループです。無尾目(カエル)、有尾目(サンショウウオ・イモリ)、無足目(アシナシイモリ)の3群に分類されます。全群に共通することは、幼生時にはえらがあって水生生活を送り、成長すると肺を生じて陸で生活するようになることです。

 インドネシア・北カリマンタン州とマレーシア・サラワク州の国境に近いボルネオ島最奥地を旅していた時、村へ通ずる森の中の小径でミミズのような小動物の死体を見つけました。25センチと、ミミズならば「巨大ミミズ」です。死んでじきなのか、一見生きているようでした。しかし、頭の形や皮膚の感じからするとミミズではなさそうだし、メクラヘビとも違っています。気になったので、私は採集したコウモリと一緒にアルコール保存して研究室に持ち帰りました。ずっと後になって爬虫両生類の専門家に見てもらい、それが、アシナシイモリだと教えられました。

 アシナシイモリは日本にいないため、私たちには馴染みの薄い生き物です。外観は日本の大形ミミズのようで体長20~40センチ。皮膚はなめらかでヌラヌラしています。しかし、皮膚に埋もれた小さなうろこがあるそうです。目は退化しており役に立ちません。両生類は体外受精を行う種類がほとんどですが、アシナシイモリは交尾して体内受精を行います。川沿いの湿った場所に産卵し、ふ化した幼生は水の中で生活するため、えらで呼吸をします。幼生期には眼も正常で、尾は平たく泳ぐのに都合よく出来ています。幼生期の終り頃になると、肺が発達し、陸にあがって一生を穴の中で過ごすようになります。

オオキメアラヒキガエル 日中でもじっと静止していることが多い。

 アシナシイモリは東南アジア、インド、中南米、アフリカなど世界の熱帯域に分布し、6科38属171種を数えますが、東南アジアに分布するのはヌメアシナシイモリ科2属39種です。そのうち何種かがボルネオで確認されています。ブルネイで発見された種は42.5センチもある巨大なものでした。体長が胴幅の30倍もあり、本当にミミズのような体型をしているのです。フタバガキ林内を流れる川近くの、地下の穴の中で生活し、ミミズや小昆虫を食べているようです。私が見つけた死体が、なぜ道の上にあったのか分かりません。繁殖期になって相手を探していたのか、あるいは産卵のために川へ向かう途中、鳥か昆虫に襲われたのかも知れません。

 さて、話を両生類全体のことに戻しましょう。ボルネオ島に棲息する両生類は、アシナシイモリを除いて186種のカエルが報告されています。日本にはいない無足類が分布することとは逆に、日本では普通にいる有尾類がまったく分布していません。これは東南アジアに広く共通していることです。有尾類は旧北区と新北区の生き物で、イボイモリやシリケンイモリなどわずかな種類が境界を越えて、東洋区の一部、例えば奄美諸島と沖縄諸島などに分布しているのにすぎません。

 ボルネオには、日本では普通に見られるアマガエル科(日本に2種)は、棲息していません。逆に、日本にはいないコノハガエル科(29種)、スズガエル科(1種)、ハナトガリガエル科(3種)が分布しています。ヒメアマガエル科は日本ではヒメアマガエル1種のみですが、ボルネオでは25種。アカガエル科は日本では23種、ボルネオには29種。ヌマガエル科は日本3種、ボルネオには20種。アオガエル科は日本では7種、ボルネオでは47種が分布しています。アオガエルの仲間では、日本のモリアオガエルやシュレーゲルアオガエルのように、アマガエルを巨大にしたような緑色の美しいカエルや、褐色系の種類も多いのですが、樹上に棲む種類がほとんどで、「滑空する」トビガエルの仲間もアオガエル科に属しています。

クロミミシロアゴガエル 夜間は地上でも採餌する。

 他には、日本では外来種を含めて4種しかいないヒキガエル科が32種もいます。ヒキガエルの多くの種に共通しているのは、眼の後方と鼓膜の上に毒腺があり、乳液状の毒を持っていることです。また、皮膚に分布するイボにも毒があります。毒は、人が触れても後で手洗いをすれば問題ないのですが、カエルを食べようとするヤマネコ、ニシキヘビ、ワシやタカには危険なもので、積極的にヒキガエルを襲う動物はいません。ヒキガエルは一般に大形ですが、全長10センチを超える種は多くありません。ところが、ボルネオにはオオキメアラヒキガエル(写真)という特別に大きくなる種がいて、メスの場合、20センチを超える個体がいるのです。強く触れたり脅したりすると、強い毒を大量に出すことでも知られています。毒は卵や幼生にもあります。発達した水かきがあり、泳ぎも得意ですし、ジャンプもします。主な食べ物はアリですが、昆虫類の他、カエル、小形のヘビやトカゲを捕食したりもします。深い森の林床だけでなく、倒木の上でじっとしている姿が目撃されます。

 日本の両生類は75種。うち、32種が有尾類、39種が無尾類です。無尾類にはアフリカツメガエル、オオヒキガエル、ウシガエル、シロアゴガエルの4種の外来種が含まれます。

クールガエル属の一種 大きな川の下流域や湿地帯の土手に棲む。

 日本の両生類は、爬虫類と同様トカラ海峡以北は旧北区系の要素をもっています。それより南の琉球列島は東洋区系の要素が強く、固有種が多いと同時に近縁種が中国南部や台湾、東南アジアに分布していることも特徴の一つです。日本列島で特に注目されるのは、サンショウウオ科の種類が豊富なことです。日本の小形サンショウウオは3属28種に分類されています。サンショウウオはウラルから南中国にいたる、主としてアジア大陸東縁に分布していますが、我が国で著しく特異な分化をしており、ほとんどが日本固有の種となっています。これは各地で急峻な山によって地理的に隔離された結果、日本という狭い地域内でさえも多くの種に分化したためです。

著者プロフィール

安間 繁樹(やすま・しげき)

東京大学大学院博士課程修了。農学博士(哺乳動物生態学専攻)。
世界自然保護連合種保存委員会(IUCN・SSC)ネコ専門家グループ委員。熱帯野鼠対策委員会常任委員。公益財団法人平岡環境科学研究所評議員。2004年 市川市民文化ユネスコ賞受賞。
若い頃から琉球列島に関心を持ち、とくにイリオモテヤマネコの生態研究を最初に手がけ、成果をあげた。1985年からは、おもに国際協力機構(JICA)海外派遣専門家として、ボルネオ島で調査および研究指導に携わってきた。西表島とボルネオ島に関し、あるがままの自然と人々の営みを記録すべく歩き続けている。
著書 西表島および琉球列島関係
『ネイチャーツアー西表島』(東海大学出版会)、『西表島自然誌』(晶文社)、『石垣島自然誌』(晶文社)など
ボルネオ島関係
『キナバル山 ボルネオに生きる自然と人と』(東海大学出版会)、『ボルネオ島最奥地をゆく』(晶文社)、『ボルネオ島アニマル・ウォッチングガイド』(文一総合出版)など多数

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