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Vol.91 ボルネオ島の鳥類

2017.12.25

 トクトクトク、トクトクトク、・・・・・・。ピトン、ピトン。ダダダ、ダダダ、・・・・・・・。ピーピピッ、ピーピピッ。チクチク、チクチク、・・・・・・。どこで目が覚めても、ボルネオの夜明けは小鳥の大合唱です。サイホウチョウ、ヒタキ、チメドリなどメジロより小さな種類から、シキチョウ、オオギヒタキ、ヒヨドリなどスズメの大きさからもう少し大きな鳥の仲間まで。ロッジの手すりからも、少し離れた森からも聞こえてきます。大合唱は1時間くらい。これから始まる一日の大序曲と言えるでしょう。

 ロッジの庭にはハイビスカス、ダンドク、カンナなどの花が常に咲いていて、強い陽射しが照りつける日中になると、タイヨウチョウやクモカリドリなどがやって来ます。いずれもクチバシは弓状に下に湾曲し、管状の舌で専ら花の蜜を吸う仲間です。分類や系統は違いますが、アメリカ大陸のハチドリ科やオーストラリアのミツスイ科と同様のニッチェを占める鳥たちです。大変きれいな鳥ですが、満足できる写真に収めることが難しいのです。メジロより小さく、せわしなく動き、同時に花も揺れるからです。

 ボルネオ島では2011年の時点で669種の鳥が記録されています。そのうち52種がボルネオ島固有種です。研究はまだ十分とは言えないのですが、比較的調査が進んでいるサバ州では、2014年の森林局の資料によれば、586種の記録があります。キツツキ、ハト、カッコウ、ムシクイ、カワセミ、キジやヤケイの仲間が多く含まれます。

シロクロサイチョウ。川近くの深い森に棲む。数は少ない。

 ボルネオは生物地理学でいう東洋区に属します。東洋区はアジアの熱帯地域のことです。この東洋区全般に言えることですが、まず、キツツキ科のように南北アメリカ、ユーラシア大陸と共通した種類がいます。キツツキ科は世界で30属225種。ボルネオには、朝鮮半島やかつては対馬にも生息していたキタタキが分布します。キツツキ科なのに「キタタキ」と呼ぶには理由があります。あまりに大きすぎるので、「木を『つつく』のではなくて、『たたく』のです。全長48センチ、頭頂部が赤色、クマゲラに良く似たアジアでは最大級のキツツキです。

 東洋区、エチオピア区(サハラ砂漠以南のアフリカ)、オーストラリア区の一部(インドネシア東部、メラネシア)に共通するサイチョウ科。世界で13属59種、ボルネオには8種が分布します。くちばしの上にサイの角を連想させる突起物をもつ大形の鳥で、「サイチョウに会いたい」という目的だけで、ボルネオを訪ねる旅行者も多いのです。

 サイチョウと同様の分布をするタイヨウチョウ科。タイヨウチョウは全長9~22センチ、メジロより小さな種類からヒヨドリの大きさまで、世界で16属136種が知られています。オスの場合、多くが極彩色で、メタリックに光る羽根を持つ種類もあります。

ムナオボウギヒタキ。屋敷林や川沿いの明るい森林に多い。

 ゴシキドリ科は世界の熱帯地域に共通する鳥とされてきましたが、現在は中南米のゴシキドリ科、エチオピア区のハバシゴシキドリ科、東洋区のオオゴシキドリ科に分けられています。オオゴシキドリ科は3属30種。ボルネオでは9種。濃緑、淡緑、青、赤、黒、黄、灰色と様々な色が混ざっており、フィールドで種の同定をするのはとても大変です。

 ハト科、キジ科は旧北区と共通する仲間です。ハト科はボルネオで20種。ミカドバト、ソデグロバト、アオバトなど、英語でピジョンと呼ばれる仲間が12種。スマートな体型で、主に樹上で採餌をし、果実を食べる仲間です。キジバト、キンバト、チョウショウバトなどはダブと呼ばれる仲間で8種います。ずんぐりした体型で、地上、樹上の両方で採餌し、主に種子、穀類を食べるハトです。

 キジ科はボルネオで16種。オスの場合全長2メートルにもなるセイラン、野鶏の一種コシアカキジも分布します。また、ニワトリの原種と考えられるヤケイ(野鶏)もいますが、これは、害虫駆除の目的でアブラヤシ農園に放逐し、それが野生化したものです。本来インド北東部からミャンマー、タイ、マレーシア半島、インドネシアの島々、フィリピンに分布。オスは日本の地鶏に似た赤茶と黒の羽色で、緑色の金属光沢がありますが、メスは地味な褐色をしており、尾も長くありません。

チャムネバンケンモドキ。低地から丘陵にかけての森林で見られる。

 キュウカンチョウもいます。ムクドリ科の鳥で、森林地帯で小群を作って生活しています。決して珍しい鳥ではなく、高い木のてっぺんで、ピーヨッ、ピーヨッとさえずっている姿をよく見かけます。ムクドリと異なり地上へは降りず、樹上で昆虫や木の実などを食べています。キュウカンチョウはインコ、オウム類と並んで人まねが上手ですが、発音の正確さ、特に母音を正確に発音する点では動物界一番だといえます。

 カワセミの仲間は日本にいる小形のものより、むしろ大形のアカショウビン、ヤマショウビン、ナンヨウショウビンなどが目に付きます。これらの鳥は、川沿いで見られますが、特に森林をぬう小さな川やマングローブに多い気がします。川縁の杭や木の枝に止まり、舟が近づいてもじっとしていることもあるし、飛び去って100メートルくらい先の木に移ることもあります。水面すれすれを飛び、止まる時はフワーッと舞い上がるようにするので、どこへ移ったのか遠くからでも分かるのです。

 鳥類は日本では290属633種が記録されています。面積から考えて鳥類の豊かな国です。これは日本の緯度が関係しています。南と北の要素が混じる良い位置にあるからでしょう。日本の鳥は75パーセントが旧北区系、20パーセントが東洋区系、残り5パーセントが固有種です。

 ボルネオと日本との共通種は、ズアカアオバト、オオクイナ、ムラサキサギ、キンバトのように日本を北限とする留鳥で、東南アジアに広く分布する鳥。その他、シギ、チドリ、ツバメ、ブッポウソウやアカショウビンのように、日本とボルネオを行き来する渡り鳥も282種知られています。

著者プロフィール

安間 繁樹(やすま・しげき)

東京大学大学院博士課程修了。農学博士(哺乳動物生態学専攻)。
世界自然保護連合種保存委員会(IUCN・SSC)ネコ専門家グループ委員。熱帯野鼠対策委員会常任委員。公益財団法人平岡環境科学研究所評議員。2004年 市川市民文化ユネスコ賞受賞。
若い頃から琉球列島に関心を持ち、とくにイリオモテヤマネコの生態研究を最初に手がけ、成果をあげた。1985年からは、おもに国際協力機構(JICA)海外派遣専門家として、ボルネオ島で調査および研究指導に携わってきた。西表島とボルネオ島に関し、あるがままの自然と人々の営みを記録すべく歩き続けている。
著書 西表島および琉球列島関係
『ネイチャーツアー西表島』(東海大学出版会)、『西表島自然誌』(晶文社)、『石垣島自然誌』(晶文社)など
ボルネオ島関係
『キナバル山 ボルネオに生きる自然と人と』(東海大学出版会)、『ボルネオ島最奥地をゆく』(晶文社)、『ボルネオ島アニマル・ウォッチングガイド』(文一総合出版)など多数

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