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Vol.82 ボルネオの森と動物たち その1 ボルネオ島の地史や気候

2017.3.25

 今回からは、私が長らく関わってきたボルネオ島を通して、アジアの熱帯雨林と生き物の関わりを紹介していきます。

 ボルネオは日本の南南西6,000キロメートル、赤道をまたいで北緯4度から南緯7度、東経109度から119度に広がる島です。面積746,000平方キロメートル、日本の2倍の広さがあり、世界で3番目に大きな島です。

 植物の中には、フタバガキやウツボカズラのように、マダガスカル島からインド洋沿岸、東南アジア、インドネシアの島々を縦断してニューギニア島まで、波を描くような分布域を持つものがあります。その中心に位置しているのがインドシナ半島からボルネオ島です。特にボルネオは、島でありながら広大な面積を占め、さらに他の地域から海で隔てられているために、固有の生き物も多い所となっています。

最高峰キナバル山。標高4,095.2m。

 ボルネオは3つの国から成っています。北西部はマレーシア国のサバ州およびサラワク州で、2つ合わせて東マレーシアと呼ばれています。また、北西部にはサラワク州に取り囲まれるようにしてブルネイ王国があります。残り4分の3がインドネシア領で、カリマンタンと呼ばれています。東カリマンタン、西カリマンタン、南カリマンタン、北カリマンタン、中央カリマンタンの5州から成っています。

 ボルネオ島の大部分は砂岩、泥岩、石灰岩から成り立っています。石灰岩の起源はサンゴ礁です。つまり、ボルネオの起源は海底が隆起したということです。一帯の海底は、約15,000,000年前から地球の地殻変動と褶曲作用によって隆起を始め、約3,000,000年前、新生代第三紀の終わり頃に、大きな陸地になったと考えられています。

 ウルム氷期と呼ばれる最後の寒い時期には、海面が少なくとも現在より50メートル低かったと考えられています。その時代、現在のマレー半島、フィリピンや多くのインドネシアの島々は繋がった陸地であり、アジア大陸の東南端に突き出た半島部を形作っていました。そこは、地史的にはスンダランドと呼ばれています。その後、今から約12,000年前、地球の温暖化によって氷河が解けて海水面が上昇したことで、ボルネオは大陸から分断されて、今あるような島になったのです。

ボルネオオランウータン。現在はボルネオ固有種として扱われる。

 ボルネオの熱帯雨林は、約10,000,000年前に原型が出来上がったといわれています。また、ボルネオには豊富な石炭層が分布していますが、これは7,000,000年前の湿地林やマングローブがもととなっています。樹木は死ねば朽ち果て、最後は無機質に分解されます。ところが、枯れて倒れた場所が水の中ですと、酸素呼吸をするバクテリアの活動がなく、樹木は朽ちることがありません。これが気の遠くなるような地史年代を経て樹木は泥炭になり石炭に変化していくのです。それですから、石炭層が分布する場所は、最初、湿地林またはマングローブであったと結論できるわけです。

 ボルネオ島を広範囲に覆う砂岩と泥岩は、もろく浸食されやすい地質です。そのため、特にボルネオの東部から南部にかけては、丘陵状の低地と湿原状の平原が遙か彼方にまで拡がっています。遠望すると地平線が見えるような地形で、特に目立ったピークはないのですが、その中は小さな尾根と沢が入り組み、相当複雑な地形になっています。

 中央カリマンタンと西カリマンタンの境界をなすシュワネル山脈、南カリマンタンのメラトス山脈、および島の北西地域のサバ州に散在する山地は火成岩で出来ています。そのような山地と島の中央部は標高1,000から2,000メートルに達する山岳地帯となっています。その他、サバ州の南東部には火山岩が見られますが、活火山はありません。

アジアゾウ。ボルネオ固有亜種で、大陸産に比べてひとまわり小さい。

 ボルネオ島は赤道上に位置しています。このことから年間を通して高温多湿の気候になっています。日中の最高気温は摂氏約30度、月平均気温は毎月ほとんど変化なく、海岸近くの平野部で摂氏27から28度です。年間降水量は地方によってかなりの違いがありますが、平野部で2,000ミリ、山間部では5,000ミリに達します。

 気候は、四季がなく乾季と雨季の2つです。4から9月が乾季で、10月から翌年の3月までが雨季です。最も降雨量が多い月は11月から翌年5月の間に記録されています。とはいっても、雨季と乾季で降雨量に大きな違いはなく、地方によっては季節の違いがはっきりしなかったり、年によっても気候に大きなばらつきが出たりします。

 さて、ボルネオの森林のタイプや特徴、動物との関わりについては、今後、詳しく説明します。ただ、最初に話しておきたいことは2つです。1つは、ボルネオは「陸島」といって、かつては大陸の一部だということ。つまり、島として切り離された時点ではアジア大陸と同じ生物相を持っていた。決してゼロから出発したのではないということです。

 もう1つ、ボルネオは熱帯気候で降雨量も多いことから、もともと全島が森林で覆われていました。森林の70パーセントが低地混交フタバガキ林で、標高0から1,200メートルに分布しています。そして、動物の約80パーセントが、この森林に棲息しています。低地混交フタバガキ林とはフタバガキ科の樹木が優占する森林で、一般にいう熱帯雨林(=熱帯多雨林)のことです。動物の約80パーセントという数値は、マレー半島での研究からの推測です。マレー半島では、哺乳類全体の78パーセントが原生林かそれに準ずる良い森林に棲んでいます。また、81パーセントは標高600メートル以下に集中しています。

著者プロフィール

安間 繁樹(やすま・しげき)

東京大学大学院博士課程修了。農学博士(哺乳動物生態学専攻)。
世界自然保護連合種保存委員会(IUCN・SSC)ネコ専門家グループ委員。熱帯野鼠対策委員会常任委員。公益財団法人平岡環境科学研究所評議員。2004年 市川市民文化ユネスコ賞受賞。
若い頃から琉球列島に関心を持ち、とくにイリオモテヤマネコの生態研究を最初に手がけ、成果をあげた。1985年からは、おもに国際協力機構(JICA)海外派遣専門家として、ボルネオ島で調査および研究指導に携わってきた。西表島とボルネオ島に関し、あるがままの自然と人々の営みを記録すべく歩き続けている。
著書 西表島および琉球列島関係
『ネイチャーツアー西表島』(東海大学出版会)、『西表島自然誌』(晶文社)、『石垣島自然誌』(晶文社)など
ボルネオ島関係
『キナバル山 ボルネオに生きる自然と人と』(東海大学出版会)、『ボルネオ島最奥地をゆく』(晶文社)、『ボルネオ島アニマル・ウォッチングガイド』(文一総合出版)など多数

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